檻の中と脱走兎
一人ぼっちでいたことの寂しさを君が教えてくれた。
熱さも涼んでのんびりと過ごしやすくなってきた。ボクは月の輪熊のツッキーって言うらしい。ここは動物園という所らしくて毎日変な色を着た似たような肌色をしたニンゲンという存在がくる。そんなことより今の状況どうしよう。
いつものように、岩山の上に作られた木の家で寝転がろうとしていたら先客がいた。朝ごはんの赤い実を一個持ってのんびりと食べようとしていたのにここはボクだけの場所なのに誰?
木の家の中には藁がひいてあって暖かいのにその真ん中に小さくて白いのがプルプルと震えている。そういえばニンゲンが朝から騒いでいたけどこれが原因かな。ボクには何にも関係が無いけど。その白いのは触るとボクの毛よりもフワフワで暖かくて触るとすぐに壊れてしまいそうなほど小さかった。
「ねぇ、そこボクの場所。」
「…(プルプル」
つんつんと突いても何にも変わらない。
「ねぇってば。」
起きてくれない。隠していた赤い実を隣に置くと赤い実のほうが半分位の大きさであれ?動いたピクピクしたのがさらに動いて可愛い。あっ、ボクの赤い実食べた。でも、一口が小さくてシャリシャリと音を立てて一生懸命食べている。ボクなら3口で食べきるのにモグモグとまだ食べてる。
「ぷはぁ、生き返った。いや今回の大脱走もうさ吉様の勝ちということで。ニンゲン共め目に物見せてやったぜぇ。」
「ねぇ。」
「ん?誰だいって。うっわぁぁぁ、止めて下せぇお願いします。食わないでくだせぇよぉ。そんな大きい口でパクッとするのは止めてくだせぇ。」
半分ほど食べた所で活発に口が動き始めたから声をかけただけなのに怯えて後ずさられた。まだ何にもしていないのに。
「煩い、黙んないと本当に食べるよ。」
そう言うとさっきまで活発に動いていた口が押し黙って近づいてきた。
「ボクはツッキーだって、きみはうさ吉で合ってる?」
「はい!!そうでございますよツッキーの旦那。俺っちはうさ吉と申しやす。」
旦那ってなに?まぁいいや、そんなに嫌な言われ方じゃないから。それよりもと残った赤い実を持ち上げて一口で食べた。それを見てあんぐりと口をあけたうさ吉の顔が面白かった。
「それで、ツッキーの旦那俺っちに何の用ですかい。このうさ吉ツッキーの旦那に食べられない為に粉骨砕身いたしまさぁ。」
「肉ってあんまり好きじゃないし、ただでさえ毛だらけで食べる所少ないのにまずそう。」
肉ってあんまり好きじゃない。そのことを知っているニンゲンは野菜や果物をいっぱい出してくれる。でも肉のほうが安いって言ってたのは聞こえない。だってまずいから。
あんまり好きじゃないっていったときのうさ吉の喜びようは舞ってるみたいでかわいかった。
「ねぇ、ボクの友達になってよ。で、たまに遊びに来て。」
ここは、ボクしかいなくてニンゲンに見られるだけの日々はうっとうしい。だから誰か話す友達がボクはほしい。そう思っただけ。そう思っただけでただの暇つぶし。
「了解でやんすよ。林檎のお礼にまた遊びにきまさぁね。俺っちは脱走のプロでやんすからあんなニンゲン共ちょちょいのちょいですよ。」
そう言って笑った顔がまたフワフワでぎゅうって抱きしめるとビクッとなって固まったけど、フワフワがの触り心地が嬉しい。
こうしてボクとうさ吉の友好関係が始まった。
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