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5話・「安西さんの心のキズ」

 次の日。オレはグレート生徒会室で書類整理してた。


 りささんは融会長を連れて、ピクニック先の事前視察。そう言ったら聞こえは良いけど、あの2人だから、実際は先取りして遊びまくってるだろうな・・・要するに、面倒くさい書類整理をオレに押し付けていったわけ。



 オレは全ての書類に生徒会のハンコを押して、ゆっくりと肩の力を抜いた。はぁ、やっと終わった。


 書類をしまって、ふと喉が渇いたから、オレはインスタントのコーヒーを取り出す。

 コーヒーを入れてるなか、ふと、昨日の言葉を思い出す。


『私たちがカンペキな作戦を立ててあげるから』


 りささんたち、勝手に盛り上がって・・・何か変なことしてなきゃいいけどな・・・


――――コンコンッ


 ドアのノックする音がする。何だろう、お客さんかな?


「どうぞ、開いてますよー」


「失礼します」


―――――なっ!


 入ってきたのは、安西さんだった。いつものSSSメンバーはいない。


「おっ、おはよう・・・」


「おはようございます。本日は、グレート生徒会の皆さんはいないのでしょうか?」


「融会長もりささんも、今日はピクニック先の下見に行ってるけど・・・」


「そうですか。SSSも今はみんなピクニック先に事前調査に行ってるんです。それで、栗矢さんに残ってグレート生徒会の皆さんと打ち合わせをするように指示されているのですが」


 栗矢の奴・・・カンペキな作戦ってこういうことか。どう見ても公私混同だろ・・・けどナイス!


「なら、好きな所に座って。今コーヒー入れるから」


「あっ、別にお気遣いなく」


 安西さんは気が悪そうに微笑みながら椅子に座った。


 オレは彼女にコーヒーを差し出すと、書類を探して彼女と向かい合うように座った。


「こっちもそっちもみんな来なさそうだし、先に始めちゃおうか」


「そうですね。仮の案として、先に決めちゃいましょう」


 生徒会室で、たった2人で、ピクニックの打ち合わせ。


 打ち合わせっていっても、ほとんどはオレが説明してた。安西さんは転校してきたばっかで、ピクニックのことは全然わからなかったから。


 けど、オレたち2人じゃほとんど話は決まらなくて、「会長たちが戻ってきたら」ってほとんどの案件を保留にしてた。



 オレは、安西さんと2人話していて、楽しいと思った。内容はつまんない仕事の話だけど、安西さんは真剣にオレの話を聞いてくれて、すごく嬉しかった。


 小さなことだけど、やっぱりオレは安西さんが好きなんだなぁって、改めて実感する。


「・・・ふぅ、これで全部か」


「といっても、全部保留にしただけですけどね」


 安西さんは冗談でも言うように、舌を少し出して笑った。普段はおしとやかな安西さんの、子どものようないたずらの瞳も、いつもとは違ってステキだと思った。


「けど、すごく話しやすかった。知らないことでもすぐに理解してくれたし。やっぱり、前の学校でも生徒会をしてたから、すごくしっかりしてるね、安西さんは」


「いやっ、私なんか全然役に立ってませんよ。SSSでも前の学校も、雑用ぐらいしかしてませんし。・・・それに、みんなを引っ張るのはいつもあの人が・・・」


「えっ?」


「えっと・・・何でもないです」


 ん? 何て言ったんだろ・・・小さくて聞こえなかった。


「それよりも、今回は本当にありがとうございます。勉強になりました。迷惑でなければ、またわからないこと、お尋ねしてもいいですか?」


 安西さんは申し訳なさそうに、ちょっと照れながらオレに了解を求めてきた。


「迷惑だなんて・・・もちろんいいに決まってるって」


「ありがとうございます。正直、ちょっと不安だったんです。転校してきたばかりで、頼る人なんていませんし・・・けど、それなら安心です」


「なら、よかった。・・・そういえば、安西さんはどうしてうちの学園に?」


 ふと気になって、何気なく尋ねてみた。けど、安西さんは突然口を重くして、なかなか答えてくれない。


「それは・・・別に・・・家の都合です」


「そうなんだ。けど寂しくなかったの、友達と離れて?」


「・・・もう、この話はやめにしましょう」


 オレはとにかく安西さんと話そうと、必死に話題を探してた。だから、急に様子がおかしくなった安西さんの気持ちまで、気が回らなくって。


「うっ・・・そうだよな。寂しいに決まってるか。生徒会の人たちとも会えなくなって」


「・・・やめてっ」


「けど、きっと栗矢たちなら仲良くしてくれるよ。オレだってできることなら手伝うし。だからさ、気軽に頼ってくれたら――――」


――――ピシッ!



 一瞬、何が起こったのかわからなかった。気づいたときには頬がヒリヒリと痛くて、安西さんが手を振り上げてた。



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