3話・「SSS(こと、スーパーなスクールライフをこの神藤誠が保障しますの会)」
融会長の指差した先には、男が2人。女の子が2人。
彼らは良く知ってる。・・・うん、悲しいほど知りすぎてる。毎日、オレたちグレート生徒会と衝突してるから。
「中波融よっ! 相も変わらず我々に屈しない反逆者め! 今日こそ我々SSS、『ス―パーなスクールライフをこの神藤誠が保障しますの会』が必ずグレート生徒会をつぶしてやる!」
この独裁者的口調の人は、神藤誠先輩。
SSSこと『スーパーなスクールライフをこの神藤誠が保障しますの会』の会長。学園一、背の低い人。
融会長とは『真の生徒会長』を争っていつも対抗意識燃やしてる。それが、この迷惑な2大生徒会戦争の原因。
「神藤会長、グレート生徒会の皆さんに失礼です。全く、最近の『スモール神藤』は礼儀も知らないのですか?」
メガネをかけて制服をきちんと着こなす優等生ぽいやつは、栗矢天美。オレと同じ学年で、SSSの会計。
とにかく慇懃無礼。神藤会長を尊敬してるようで、完全になめてる。
「誰が『スモール神藤』だ! 小さくなどない!」
「別にいいじゃないですか、神藤かいちょー。可愛いですよ、『スモール神藤』・・・っ(笑)」
この鼻で笑ってるのは、生嶋大地。こいつもオレと同じ学年で、SSSの副会長。
こいつも神藤会長のことなめてる。
で、この3人でSSSのはずなんだけど・・・もう1人いる女の子・・・
あの子・・・財布を拾ってくれた・・・
「くっ、聞けぇグレート生徒会よ! 今日は宣戦布告に来た! 年に一度の3学年合同ピクニック、貴様らに進行役は荷が重過ぎる。安心してSSSに任せたまえ! 我々の活躍を、雁首そろえて見てるがいい!」
「バカを言え、SSS! ピクニックを成功させ、世界を救うのは我等グレート生徒会だ! お前たちこそ進行役のことは忘れて、ピクニックを存分に楽しめばいい!」
「何をっ!」
「何がっ!」
ジリジリジリッ――――
融会長と神藤会長の闘争心がぶつかって、火花が散る。
・・・何か、キャラ被ってるな、この2人。
それはともかく、問題はあの子。
SSSメンバーと一緒に入ってきた子は、間違いない。彼女だ。昨日、オレの財布を拾ってくれた女の子。
なっ、何で、こんなところに・・・
「ん? どうしたの光弥?」
「何で・・・あの子が・・・」
「ふぅん? もしかして、例の財布拾ってくれた子? 可愛いじゃん」
「べっ、べべべべべ別に! そそそそっ、そんっ、そんなこと、思ってません! ただ、あのときのお礼を言えてないなぁって・・・ブツブツブツブツ・・・」
「別に私は何も言ってないじゃん。なに自爆してんの?」
「だから、自爆も何も変なことは考えてませんって!」
「嘘つかないの♪ 正直になりなさい。まぁ、このりさセンパイに任せてよ。天美ぃ、ちょっと来て」
だから、人の話を聞いてください。
けど、りささんはそんなオレのことは無視して、勝手に栗矢を呼びつける。
「なんですか、りさお姉さま」
別に、この2人は姉妹ってわけじゃない。この2人はどこか馬が合うみたいで、仲がいい。りささんの方が年上だから、親しみと敬意を込めて『お姉さま』って呼んでるだけ・・・らしい。前に栗矢に聞いたときはそう言ってた。
「あの子、初めて見る顔なんだけど、ダレ?」
「あぁ、安西くるみさんです。学年は私や高橋くんと一緒。つい最近転校してきたばかりで、前の学校でも生徒会にいたらしいです。それで、SSSの書記をお願いしてるんです」
安西・・・さん・・・
「んっ! 天美! 何グレート生徒会の連中と仲良くしてるんだ! 我々の敵だぞ!」
融会長と張り合ってた神藤会長が、オレたちがコソコソ話してるのに気が付いて、口を挟んでくる。
オレもりささんもイラッてした。けど、栗矢のやつは知的に微笑んで、神藤会長に詰め寄っていく。
「ですから神藤会長。グレート生徒会の皆さんに失礼です。『マイクロ神藤』は学習能力もないのですね。はぁ、仕方ありません。これはお仕置き『C』ですね」
「Cぃ! 何なんだCって!」
「簡潔に説明すると、CはBの3倍のお仕置きです」
「――――ぃっ!」
あの高圧的な神藤会長が、本気でビビッてる・・・どれほどなんだ・・・お仕置きBって・・・
「そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ、神藤かいちょー。Bの3倍ってことは、たかがAの倍じゃないですか」
生嶋が不敵な微笑みで神藤会長の肩を叩く。
「―――やめろっ! やめてくださいっ! Aの倍は死んじゃうって!」
「では、戻りましょうか」
栗矢は、神藤会長の襟元をつかんで、生徒会室を出て行く。そのときの栗矢は心底楽しそうな笑顔・・・あんな顔、普段見たことない・・・
・・・ドS。
「本気でやめて下さいお願いしますすいません調子に乗りすぎました反省しますから助けろ中波融ぅ~!」
どんどん小さくなって消えていった神藤会長の声に、オレとりささんは苦笑い。
「お騒がせしました。中波会長。じゃあ、オレはもうこれで。早く行かないと、天美が俺の分を残してくれそうもないんで」
生嶋は融会長に礼儀正しく頭を下げて、帰っていく。
・・・けど、聞いてしまった。帰る直前の、生嶋の独り言を。
「これだから、SSSはやめられないんだよな♪」
・・・こわっ・・・ドS2号。
生嶋が出て行ってすぐ、外から神藤会長の叫び声が聞こえる。
(ドSすぎるので、音声のみでお楽しみください 作者談)
「―――やっ、やめてくれ! なっ、天美。ここは平和的に話し合おうではないか。俺が悪かった・・・だからっ、許してっ・・・
ああああああぁぁぁぁ!」
「うふふふっ♪ あはははっ♪」
「ぎゃゃゃゃぁぁぁあああぁぁぁ!」
「・・・神藤誠、ご臨終ね」
りささんが、SSSに若干引き気味に呟いた。
「オレ・・・何で『SSS』っていうのか、わかったような気がします・・・」
Sを3つもつけるような、サディスティックなグループ・・・