2話・「グレート生徒会」
「さぁ、みんな! 今こそ我等が立ち上がるときだ! 世界は今、混沌まみえた暗黒の時代! 未曾有の大不況と言われ、地球の気温が上がるこの危機を解決できるのは、そう! 我等しかいない! この学園の隅々までいる迷える子羊たちのために、この世を救済しようではないか! 我等『グレート生徒会』が!」
・・・・・シ~ン
アホくさぁ・・・
ここは、オレの所属する生徒会室。
声高らかに叫んでたのは、会長の中波融先輩。妙な正義感に駆られて、変な方向に熱血漢な人。
「はいはい、ご自由に。けど私たちは付き合わないから」
大人びた女性が、コーヒーを飲みながら融会長をテキトーにあしらう。
この人は三咲りさ先輩。グレート生徒会の副会長。気前が良くて明るく、頼れる姉貴みたいな人。
融会長とは、入学以来の腐れ縁・・・らしい。
「なにぃ、りさくん! 君は危機感を覚えないのか! 君に流れる選ばれし者の血が、救世を求めていないのか! なんと嘆かわしい! 悪名高き『SSS』が学園内をはびこっているこの状況で、我等グレート生徒会の士気がこれほどまでに低いとは・・・」
「はぁ・・・融が暑苦しいだけじゃない」
・・・これが、オレの所属する『グレート生徒会』。ちなみにオレは書記として先輩たちにこき使われてる。どこがグレートなのかは、融会長に聞いてくれ・・・
この学園には、何故か生徒会が2つある。俺たちグレート生徒会と、『SSS』と呼ばれる生徒会が対立してるんだ。
何でも、創立当時からの対立らしい。お互いの初代会長がシャーペンを借りパクしてケンカになり、それが現在の対立のきっかけって、オレは融会長から聞いた。
2つの生徒会の溝は深くて、校外にいろんな影響を撒き散らしてる。米ソの冷戦も、原因を辿っていけばこの学園の生徒会に辿り着くって噂だ。
生徒会が2つあって何がややこしいかって、教師も生徒も2度手続きしなければいけない。けれどまぁ、クラブの部費が2重で下りてきたりする。
そして何よりも、2大生徒会のせいで学園行事がどんどん遅れていく。どちらが進行役をやるかで、いつもモメにモメるから(主に会長が)。去年は入学式を5日遅れ、文化祭は8日遅れ、5月の体育祭にいたっては夏休み中にやった。
「とにかく、だ! 現実的な問題として、年に一度の『3学年合同ピクニック』が目前まで迫っている! その進行役を完璧にこなし、この世を救済しようではないか!」
ピクニックが成功したって、世界が良くなったりはしないだろ・・・
なんてツッコミは入れない。融会長に突っ込んでたら、それこそキリがない。
「もう勝手にして・・・あっ、そういえばさ光弥、昨日あんたが道端ウロウロしてるの見かけたんだけど、何やってたの?」
うっ、りささんに見られてたのか。
「財布を落として、探してたんです。けど、知らない女の子が拾ってくれて、無事見つかって」
「へぇ、今時そんな優しい子がいるんだ。私はそのままパクるけどなぁ。光弥みたいな奴の財布だったらさらに迷わず」
「オレなら迷わずって、どういうこ―――」
「たのもうぅ!」
オレのツッコミは、突然の叫び声に消されてしまった。ドアがバタンと開き、4人の男女がゾロゾロと中へ入ってくる。
「おっ、お前たちは!」
融会長がおおげさなリアクションで驚く。
はぁ、噂をすると・・・
「「「SSS!」」」