10話・「オレと安西さんと大生徒会戦争」
「ずっと気になってたんですけど・・・どうしてSSSとグレート生徒会は仲が悪いんですか?」
「『グレート生徒会とSSS』というより、『融と神藤誠が』、なんだけどね」
確かに、りささんの言う通り・・・
「融会長はどうして神藤会長を? っていうより、どうして融会長はそんなに鬱陶しいキャラなんですか?」
「鬱陶しいキャラとは心外だぞ光弥くん。我は運命に導かれ、宿命のために生きているだけだ! よしっ、いい機会だ、教えよう! どうして我が世界を救うことを決意したか! そう、あれは我が幼く可愛い赤ん坊のころだ。当時世の中では、西の新大陸発見に沸き上がっていた―――」
「お前は何歳だ」
「話に茶々を入れるな、りさくん。どこまで話したか・・・そうだ、赤ん坊の我がお腹をすかせて泣いていると、目の前に現れたのだ! ムゥチャグヌュプル星人が!」
「「・・・なにソレ?」」
ついオレも突っ込んでしまった・・・
「なんだとっ! グレート生徒会にいてながらムゥチャグヌュプル星人を知らないのか!」
「・・・ダメだ、こいつ重症ね。病院行っても治らないわよ、この頭は」
あははは・・・笑えない。
「いやっ、そういうことじゃなくて! 相手の生徒会に勝てば何かあるのかなぁって・・・」
安西さんの言葉に、2人の会長がピクッって反応した。
「そういうことか安西! なら、とっておきのご褒美があるぞ! このために俺はSSSの会長になったと言っても過言ではない!」
「これを評価する神藤くんの感性は、認めざるを得ないな。3年間学園の運営を頑張った生徒会に贈られる、究極にして最高の――」
「「校長室でいただく、レアチーズケーキ!」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ。
「チーズケーキ・・・どういうことですか、神藤会長?」
神藤会長を平静に問いただす栗矢だけど、その声は怒ってる。生嶋も、呆れたようにため息をついた。
「どうした、天美。何かおかしいこと言ったか?」
「融も、チーズケーキってどういうこと?」
普段穏やかなりささんも、怒りを込めた笑みを浮かべて融会長の肩を叩いた。
「なっ、何を怒っているんだりさくん・・・あのチーズケーキは、代々の会長の間で伝説になっているんだぞ! 口に入れるとすぐ溶ける舌ざわり、チーズの濃厚なまろやかさ・・・あぁ、一度でいいから食べてみたい!」
ダメだ・・・このバカ会長・・・
「あーバカバカしい。帰りますよ神藤かいちょー」
生嶋が神藤会長の襟を引っ張る。
「おい、生嶋っ! 人をモルモットみたいな扱い方するな!」
――――スモール神藤・・・
「今日のディナーはフルコースですね。お仕置きABCに特別メニューも加えましょう」
「―――ッ! 安西、早く助けろ!」
「神藤かいちょー終了のお知らせ~♪」
「ぎゃぁあぁぁ! 助けろぉぉぉ!」
栗矢と生嶋に引っ張られて、神藤会長の声はどんどん小さくなっていく。
オレと安西さんは呆然としながら、お互いの顔を見つめた。
「・・・いいの? 助けなくて?」
「はい。大丈夫だと思います。あえて助けません♪」
安西さんは茶目っ気を含んだ笑みでオレにウインクした。
よかった・・・安西さん、幸せそう・・・
「仲がいいコトで。じゃあ、私たちもそろそろ戻ろうかな。お邪魔なようだし」
りささんが後ろからオレの肩を叩いて、からかうように笑った。
「なっ! そんなんじゃありませんよっ!」
「はいはい。とりあえず帰ってお説教ね、融?」
「ちょっ、りさくん! どうして我が説教を受けなければならんのだっ! 弁護を求む弁護をっ!」
りささんは融会長の手をつかんで、強引に帰っていった。
「行っちゃいましたね」
「本当、騒がしい人たち・・・」
「私、とんでもない生徒会に入ってしまったかもしれません」
「でしょ?」
オレと安西さんは思わず笑いを抑えられなくて、2人そろって笑ってしまった。
「これから、よろしくお願いしますね。前行った通り頼りにしますから、覚悟してください」
「こっちこそ、一緒にピクニック頑張ろう」
「あと、自由行動の時間も」
―――えっ! それってどういう意味・・・
前を見ると安西さんはもういなくて、神藤会長や融会長たちを追いかけてた。
――――ふぅ。
オレは大きく深呼吸して、みんなのもとへとゆっくり歩き始めた。グレート生徒会とSSSと安西さん。オレに関わる人たちが、みんな小さくなってオレの視界に留まってる。
安西さんの言う通り、とんでもない生徒会だな・・・
そう考えると、つい笑みをこぼしてしまう。
けど、悪い場所じゃないな。
安西さんも、気に入ってくれたみたいだから。
さぁて、まずは3学年合同ピクニックですかぁ。またこれからもドタバタ劇が起こると思うと、頭が痛くなるな・・・
行事はこれからいくらでもあるし、SSSとも対立も・・・
オレは、まだ安西さんを諦めたわけじゃないぞ!
これからゆっくり仲良くなって・・・そして、いずれは・・・
オレは小さな野望をふつふつと燃やしながら、安西さんの後姿を見つめていた。