1話・「出会いはベタな展開で」
今からお届けするお話は、これはオレの――高橋光弥の、初恋の話。
彼女の名前を、安西くるみさんといった。
オレは彼女に一目惚れして・・・それは単に楽しい恋じゃなかった。けどやっぱりこの恋は、自分のなかで大事なものになったと思うから・・・
お話の初め、はオレと彼女が初めて会ったとき―――――
「・・・はぁ、どこ行ったんだよ。オレの財布・・・」
図書館の帰り、歩道の真ん中でオレは困ってた。家に着いたら財布がなくなってることに気づいて。
財布落とすなんて、マジ最悪だ。対して金は入ってないけど、大量のポイントカードで分厚くなってるオレの財布。
あぁ、オレのポイントカードぉ・・・
「あの・・・すいません」
ふり返ると、後ろに女の子がいた。
真っ黒な髪を肩まで伸ばして、ピシッと制服を着た女の子。清楚な感じで、どこかのお嬢さまにような。
・・・かっ、可愛い―――
「財布って、コレですか?」
「あっ、それ!」
「ならよかった。じゃあ、私はこれで」
彼女はオレに財布を手渡して、名前も言わずに華麗に去って行った。
オレは、そんな彼女を呆然と見送ってるだけだった。
―――すごく、ステキな子・・・
オレは、初めて会った彼女にヒトメボレしてしまったんだ。