【イ軍編409】侍キラー投手陣
ホームランで仏頂面、凡打で満面の笑みと、およそ常人には計り知れない価値観で生きる、首位打者2回、本塁打王1回の打撃の職人、マ軍斗賀野。つるはしでのスイング練習、ベンチでの座禅等の奇行、そして極端に無口でぶっきらぼうな性格で扱い辛い選手の代表格として知られていたが、キャラが立っているだけに、ファン人気は相当なものであった。
そんな斗賀野であったが、この一年というもの、「セ界のボーナスステージ」こと最弱イ軍戦を、全戦代打ですら出てこない完全欠場。数字を稼げる控えの選手に感謝されているのであった。
イ軍戦欠場の理由について、決して本人が口にしたワケではないが、ファンやマスゴミの間では、
「あんな糞みたいな投手陣を打ってもしゃーない」
として、斗賀野のプロとしてのプライドが、イ軍のリトルリーグ以上マスターズリーグ未満の爆炎投手陣を許さないのだろうというのが定説になっていた。
後年、当時のマ軍監督が回顧録を出版、斗賀野イ軍戦欠場の真相が明らかになったのであった。
「斗賀野は世間では侍とか言われてたが、見かけによらず実に繊細な男。『打って当たり前の状況が一番怖いんです』と言って、イ軍戦では異常に消耗してね。間違って凡打しようもんなら、精神的ショックで一か月は立ち直れなくなっちゃってなあ。本人の希望もあったし、こっちも配慮してイ軍戦からは外すようになったんだよね」




