受験のネ申
「今度こそ大丈夫なんでしょうね」
イ軍本拠地、新宿スタジアムで行われた新外人打者の入団テスト。
GM柳澤、外人担当スカウト桑井ら球団首脳が視線を送る先に、シート打撃で来季の新外人候補ドリスコルが快打を連発する姿があった。
「去年のグリムスみたく、飛ぶバットがどうとかの詐欺師じゃないんでしょうね」
冒頭に続いて、柳澤が桑井を睨みながら念を押す。
ここ数年、立て続けに外人補強に失敗しているとあって、柳澤が疑い深くなるのも無理からぬところではあった。
「ええ、今度の奴は大丈夫ですよ。メジャーでの実績はないですが、それだけにハングリー精神もありますし、何より若い上に安く雇えます。そしてGMもご存じの通り、あのメジャー300発のスーパースター、サットンの息子ですからね。御覧の通り、左打ちの打撃には長打力もあります。左打者が手薄なウチにはこの上なくフィットしますぜ」
打線の編成が右打ちに偏り過ぎなのは、桑井の言う通りではある。
メジャー昇格目前という事もあって予想以上に出費は嵩んだが、結局の所、2年3億での契約を締結したのであった。
そして、キャンプ初日。
果たして、イ軍キャンプが張られる沖縄某球場に現れたドリスコルは、テスト時とは似ても似つかぬ肥満体であり、そして何故か右打ちなのであった。顔は確かに入団テスト時と同じ顔なのだが…
いや、非常にそっくりではあったものの、同じ顔ではなかったのである。
入団テストで豪打を披露したのは、ドリスコル本人ではなく、父親であるメジャーのスーパースター、サットンだったのである。愛する駄目息子の為にと、サットンが替え玉受験を敢行し、まんまとイ軍を騙しおおせたのであった…。




