【イ軍編360】大エース最後の打席は俺が立つ!
ノーヒットノーラン3回、最優秀防御率・最多奪三振5回等々、輝かしい実績を誇るマ軍の大エース岸本。しかしながら、ここ数年は加齢と度重なる怪我で満足に投げられず、遂に今年での引退を決意したものである。
9月下旬、セ6球団の順位が確定していた事もあり、マ軍側が引退試合を企画。先発で打者1人だけに投げる、サヨナラ登板の機会を設定したのであった。
そして、その対戦チームは「球界の掃き溜め」こと最弱イ軍なのであったが、主砲城戸が、「岸本クラスの大物が引退するとなれば、俺しか釣り合いが取れないだろ」と言えば、主戦捕手綿貫も「奴とは同期で、バッテリーを組んだ仲だ。最後は俺が見送るよ」と、岸本との対戦を熱望。他にも、岸本のオタだった、不倫してたAV女優のファンだった他、様々な理由でもって、立候補者が後を絶たなかったのであった。これには岸本も(イ、イ軍のみんな…)と、そっと瞼を拭ったのである。
一方その頃、イ軍ナイン――。
「だから俺が岸本と対戦するって言ってんだろ!」
「いや、これだけは譲れないぜ。契約更改間近の追い込み時期で、この一打席は貴重だからな」
「頼むから私に行かせて下さい! 岸本のしょぼ球を打って、何とか打率を2割に乗せときたいんです!」
そう、イ軍ナインは別に感動的演出に手を貸すつもりは一切無く、単に自分の査定の為に、確実にヒットをマークできそうな打席を奪い合っているだけなのであった…。




