これぞ真のエース! 後輩にしてあげたぐう聖行為の泣ける真相
秋風吹くペナント終了後、「球界の盟主」ことバ軍の二軍球場。
今年でクビになった若手野手数名が、トライアウトに備えてピッチングマシンでの打ち込みを必死に行っていたものである。本来なら人間が投げる生きた球を打ちたいところだが、契約を解除された状況では難しく、施設を使わせてもらえるだけマシといった態なのであった。
そんな時、ひょっこりと現れ、
「おう、ちょっと練習に付き合えや」
と、解雇された連中に声を掛けたのは、バ軍のエース右腕、苑田である。
「実戦の勘を維持しときたいからよ、野手がいないけどシート打撃形式で投げさせてくれ。打てる球があったら打っていいぞ」
目を合わさず、ぶっきらぼうに言い放つ苑田。思わぬ急展開に、言われるがまま打席に立った若手たちは、程なくして苑田の意図するところを理解した。苑田自身の練習と言いながら、その実、打ち頃の球を投げてくれている。そう、これからトライアウトに臨む自分たちに贈る、せめてもの支援なのであった。
(あんな何億ももらってる人が、俺達のためにここまでしてくれるなんて)
こうして、涙の打ち込みは小一時間ほど続いたのであった。
その後、球場管理人と苑田――。
「おい苑田、お前にもいいとこあるじゃねえか。ただ、あいつらの実力じゃトライアウトは厳しいだろうなあ…」
「だからこそ、ですよ。まともな球団じゃ通用しないだけに、トライアウトで余って、イ軍が獲る可能性が高いじゃないですか。イ軍が連中を確実に獲って弱体化する為に、生きた球を打たせて調子を整えてやらなきゃと思ったんですわ」




