【マウンドの詐欺師 神崎編⑰】必殺守備緩め
マ軍桑名とイ軍神崎による息詰まる投手戦も、いよいよ大詰め。
9回裏、イ軍が1点リードしながらもマ軍打線が疲れの見えた神崎を攻め立て、無死満塁で三番打者を迎えるサヨナラ不可避の緊迫した状況となっていたのであった。
ここでイ軍ベンチが、不可解な采配を見せる。この試合、桑名との相性が最悪で仮病を使いスタメンから外れていた「鬼併(※併殺)犯科帳」こと4番城戸を、突如一塁手として起用したのである。城戸と言えば、打撃もさる事ながら、「動かざる事地蔵の如し」として守備範囲の狭さ、そしてエラーをエラーに見せぬ演技力に定評のある最低守備力の選手である。この守備固めどころか守備緩めとしか思えぬ糞采配に、当然の事ながら神崎は激怒。自軍ベンチに向かって何事かを喚き散らし、もはや冷静な投球は望むべくもない事態となってしまったのであった。
かに見えた。
だが、全ては仕込みであり、ここからが「マウンドの詐欺師」の異名を取る神崎の真骨頂だったのである。
突如出来た守備の大穴(※城戸)をどうしても狙いたくなる打者の習性を逆手に取り、引っ張りにかかった左三枚のマ軍クリーンアップに対し、外角一本槍の投球を徹底。結果、三連続二ゴロでゲームセット。SSS級戦犯の城戸を廻り廻って勝利に貢献させるという、他には誰も真似を出来ぬ離れ業を披露したのであった。




