エアガン
キワモノ揃いのイ軍にあって、その中でも名うての厄介者が何人かいる。右翼手でエアガンが趣味の井伏がその一人である。
根暗で無口な性格ながら、ロッカーに置いてあるエアガンを持った時だけは人が変わったようにアッパーになり、若手相手にイタズラで射撃しては嫌がられていた。
一応レギュラーではあるものの、井伏も既に33歳。
取り立てて長所があるワケでもなく、素質のある若手が現れれば、すぐにでもレギュラー剥奪になるのではないかと見られていた。
そこで、井伏の僻み根性が原因となって発生した噂が「奴は自分のポジションを脅かしそうな若手の眼を狙ってエアガンを撃っている」というものであった。どう考えても新スポあたりがトバシそうな屑ネタなのだが、それでも井伏の普段の様子から、それなりの信憑性で語られてもいた。
そこで、新スポ尾藤が直球で井伏に突撃したものである。
「井伏さん、あんた自分を抜きそうな若手を、エアガンで眼を撃って潰そうとしてるって本当かい?」
この質問に対して、井伏は猛反論を展開した。
「バカヤロ、そんな事あるわけないだろ。いくら俺がプロ級の腕を持ってるからって、眼なんて的が小さくてそうそう当たらねえよ。足なら的もでかいし、確実に試合欠場に追い込めるだろ。プロは足を狙うものなんだよコノヤロー!」
想像以上の回答に新スポ尾藤は大歓喜、読者は大失笑、そして球団は大激怒したのであった…。




