【イ軍編212】夢よもう一度
かつては首位打者争いの常連で、一世を風靡した強打者三郷。しかしながら不倫スキャンダルで名門バ軍を追われてからは、転落の一途。落ちるところまで落ちて、現在は「球界の姥捨て山」こと最弱球団東京新宿イディオッツで、対左投手のプラトーン要員にまで落ちぶれているのであった。
だが、バ軍で共に戦ったエースの佐村がメジャーから凱旋帰国した事に刺激を受け、三郷も一念発起したものである。イ軍生活3年でなまくらになりまくったブランクを埋める為、シーズンオフから激しいトレーニングを敢行。春季キャンプに120%の状態で姿を現し、オープン戦でも打率6割10ホーマーの大爆発。完全復活を果たしたのであった。
かに見えたのであるが、そういった美談にならないのがイ軍のイ軍たる所以である。
毎年4月で大借金を背負い実質1か月でシーズンが終わるイ軍で3年も過ごしてしまった三郷が、フルシーズンを戦い抜く緊張感を維持する事など出来る筈も無かったのだ。更には普段負けまくる事で、しょうもない事に小さな幸せを見出す他ないイ軍色に染まり切った三郷の心は、オープン戦二冠王で大満足。
以上の理由から開幕の時点で既に燃え尽きていた三郷は、シーズンではほとんど戦力にならず、その年を以て引退。変に張り切らなければもう1、2年はやれたんじゃないかという、切な過ぎるオチがついたのであった…。




