【城戸編170】球界一釣られ上手なスーパースターの鑑
時は8月、酷暑真っ盛りのバ軍―イ軍デイゲーム。
40度近い気温、屋外球場のイ軍本拠地東京新宿スタジアム、バ軍先発は相性の悪い左腕倉木、妖怪ウォッチやりたい
以上、サボる理由が揃い踏みした事から、「40億の不良債権」ことイ軍の4番城戸は、本日の試合欠場を決意。
「打撃練習中に脇腹痛めたっつー台本で行くか」
と、ヤラセ負傷の演出の為に、打撃ケージに向かったものである。
試合開始数時間前のタイミングとあって、スタンドの人影もまばら――――と思いきや、城戸がグラウンドに姿を現したのと同時に、修学旅行生と思しき一群がバックネット裏に殺到。
「ヴォー本物の城戸選手がおる!!!!」
「実物は写真よりもイケメンじゃのう」
「ウチら田舎者はなかなか野球を見られんけえね。これが最初で最後かもしれんね」
等々、大盛り上がりなのであった。
その彼らに手を振って応えながら、
(フッ、全くかなわねえぜ。今日しか俺を見る機会が無い純粋な青少年をガッカリさせるワケにはいかねえからな)
城戸は一転、試合出場に傾いたのであった。
ややあって、バ軍ベンチ。
イ軍のスタメン発表で城戸の名前がコールされると歓声が上がり、ハイタッチの嵐が展開されたのであった。
「よっしゃ作戦成功したで!!!!」
「仕込みの修学旅行生たちが、城戸の事なんぞ知りもしないのに、奴のプライドをくすぐるいい仕事してくれましよ」
「今年のペナントはここが正念場、ボーナスステージのイ軍戦を確実に取るためには、城戸に出場してもらって勝負所で併殺打ってもらうのが一番だからな」




