【イ軍編189】ガンジー打線完成
パリーグのド軍所属、日本プロ野球史上最速で1000本安打を達成した巧打者加倉井。
基本的に打つ事にしか興味が無く、守りと走りがグダグダでプロ野球選手としては片手落ちもいいところであったが、その打撃は本物。ここ2年連続首位打者を獲得しており、本人も「バッティングを極めつつある」と豪語するなど、まさに今最も脂が乗っている選手であった。
その加倉井が、「より自分の打撃理論を完成させられる環境に行きたい」と、資格初年度の今オフにFAを宣言。非常に神経質で、往年の強打者榎本や前田のように、例えヒットでも自分の思うように打てないと不機嫌に、凡打でも自分が納得すれば満面の笑みになるような常人には計り知れない部分があったが、戦力加倉井はどの球団も欲しい。かくして球界に一大争奪戦が勃発し、その去就が注目されたのであった。
そして、セパ6球団による加倉井獲得戦線は、予想外の結末を見せる。
加倉井は、
「イ軍なら心行くまで自分の打撃を高められる」
として、誰もが予想しなかった「球界の掃き溜め」こと最弱球団東京新宿イディオッツ入りを決めたのであった。
これには例年ロートルや落ち武者メジャー中心の補強(実質補弱)にガンギレしていたイ軍ファンも大歓喜。「40億の不良債権」こと4番城戸も「フッ、加倉井と俺ならNPB最強のコンビになるな。奴とのKK砲が今から楽しみだぜ」と世迷言を並べるなど、選手間でも大盛り上がり。近年稀に見るチーム強化成功に、イ軍とその周辺は大いに浮かれまくるのであった。
だがしかし、早くも来シーズンに悲劇はやってきた。
「何としても自分の打撃を完成させる」
と力強く言い切る加倉井は、独自持論の何をそこまでこじらせてしまったものか、勝負を度外視して美しい凡ゴロを量産。
「ここ(イ軍)なら何をやってもどうせ負けるから自分の打撃に専念できるので、非常に快適」
と涼しい顔で語り、本人的に納得の凡退を繰り返しては「また一つ打撃が巧くなりました」と、意味不明なコメントを連発。かくして3、4番を組む鬼併(併殺)城戸との相乗効果で、イ軍打線はいよいよ得点が困難になり、ガンジーもびっくりの無抵抗っぷりに陥ってしまったのであった。




