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お笑い野球イディオッツ!  作者: 山岡4郎
おいでよ最弱の闇
634/5135

【城戸編166】全力疾走不可避バット

「40億の併殺マシン(※打つ方)」「白い虚砲」「消化試合の鬼」等々、様々な蔑称でブーイングされるイ軍の4番城戸。

 例年エア自主トレ&手抜きキャンプでシーズン序盤は体が全く出来ていないのであるが、今年は特にその傾向が酷く、あからさまに体が重そうな惨状。その為、「プロには力の出し所というものがある」とドヤ顔で語り、凡打の場合(ヒットの場合でも大概そうだが)に全く全力疾走をしなくなり、これが、

「打てねえなら打てねえで、せめて必死こいてる姿だけでも見せろや!」

と、イ軍ファンの非常な不興を買っているのであった。

現場責任者として、球団上層部からも、

「何とかしたまえチミィ!」

 と詰められまくる難局に頭を抱えた監督不二村は、チームのセンター兼裏用具係のリバースに、

「おい、城戸の野郎に全力走させる便利なアイテムはねえのか。この際、気分がアッパーになる薬物を一服盛っても構いやしねえよ」

 などという物騒な依頼を持ち掛ける始末。

 リバースは渋りながらも、

「カーッ、シカタネエナア。クスリハアシガツクカライヤダケド、ジャア、トクセイマホウノバットデ、キドノヤロウヲ、ハシラセテヤンヨ」

 ある手立てを実行する事にしたのであった。


 そして、リバースの仕込みが入った次の試合が訪れた。

 相変わらずまんどくさそうにバッターボックスに入った城戸が、「もう立つのもダルいわー」と言わんばかりの初球二ゴロで凡退――――と思ったら、とんでもない速さで猛ダッシュ。

「うわ、何だこの速さ!!!!」

 と、普段は城戸に大ブーイングを浴びせまくるイ軍ファンも大驚愕。

 更に、対戦サ軍の二塁手も、城戸のあまりの速さにびっくりして、一塁へ悪送球。まさかの内野安打に


 は、ならなかったのであった。


 確かに城戸は、一塁への到達時間で世界記録を打ち立てそうなレベルで加速した。しかし、その行き先は一塁ではなく、ファウルゾーンに散らばる、城戸がボールを引っ掛けて折れたバット。その残骸を物凄い勢いで回収すると、そのままベンチへ直行してしまった為に、結局アウトになったのであった。

「フッ、ドウヨカントク。キドノヤロウ、違法バットガオレタトカンチガイシテ、ヒッシコイテカイシュウシテヤンノ。アレハオレガシコンダ、違法ノヨウデタンニオレヤスイバットナノサ。オレガホンキデチョウタツシタバットナラ、アンナバレバレナ折レ方ハシネエヨ」

 リバースがドヤ顔で解説する今のプレーの内容に、ベンチ内は大爆笑。しかし、全力走こそしたものの、違法バット疑惑がますます深まり、城戸へのブーイングはこの日を境に更に激しくなったのであった…。

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