【城戸編166】全力疾走不可避バット
「40億の併殺マシン(※打つ方)」「白い虚砲」「消化試合の鬼」等々、様々な蔑称でブーイングされるイ軍の4番城戸。
例年エア自主トレ&手抜きキャンプでシーズン序盤は体が全く出来ていないのであるが、今年は特にその傾向が酷く、あからさまに体が重そうな惨状。その為、「プロには力の出し所というものがある」とドヤ顔で語り、凡打の場合(ヒットの場合でも大概そうだが)に全く全力疾走をしなくなり、これが、
「打てねえなら打てねえで、せめて必死こいてる姿だけでも見せろや!」
と、イ軍ファンの非常な不興を買っているのであった。
現場責任者として、球団上層部からも、
「何とかしたまえチミィ!」
と詰められまくる難局に頭を抱えた監督不二村は、チームのセンター兼裏用具係のリバースに、
「おい、城戸の野郎に全力走させる便利なアイテムはねえのか。この際、気分がアッパーになる薬物を一服盛っても構いやしねえよ」
などという物騒な依頼を持ち掛ける始末。
リバースは渋りながらも、
「カーッ、シカタネエナア。クスリハアシガツクカライヤダケド、ジャア、トクセイマホウノバットデ、キドノヤロウヲ、ハシラセテヤンヨ」
ある手立てを実行する事にしたのであった。
そして、リバースの仕込みが入った次の試合が訪れた。
相変わらずまんどくさそうにバッターボックスに入った城戸が、「もう立つのもダルいわー」と言わんばかりの初球二ゴロで凡退――――と思ったら、とんでもない速さで猛ダッシュ。
「うわ、何だこの速さ!!!!」
と、普段は城戸に大ブーイングを浴びせまくるイ軍ファンも大驚愕。
更に、対戦サ軍の二塁手も、城戸のあまりの速さにびっくりして、一塁へ悪送球。まさかの内野安打に
は、ならなかったのであった。
確かに城戸は、一塁への到達時間で世界記録を打ち立てそうなレベルで加速した。しかし、その行き先は一塁ではなく、ファウルゾーンに散らばる、城戸がボールを引っ掛けて折れたバット。その残骸を物凄い勢いで回収すると、そのままベンチへ直行してしまった為に、結局アウトになったのであった。
「フッ、ドウヨカントク。キドノヤロウ、違法バットガオレタトカンチガイシテ、ヒッシコイテカイシュウシテヤンノ。アレハオレガシコンダ、違法ノヨウデタンニオレヤスイバットナノサ。オレガホンキデチョウタツシタバットナラ、アンナバレバレナ折レ方ハシネエヨ」
リバースがドヤ顔で解説する今のプレーの内容に、ベンチ内は大爆笑。しかし、全力走こそしたものの、違法バット疑惑がますます深まり、城戸へのブーイングはこの日を境に更に激しくなったのであった…。




