【チョ・マテヨ編⑮】将軍様がみてる②
北朝鮮リーグでシーズン44勝、通算412勝の記録を誇る(以上全部自称)、イ軍所属の北朝鮮系ベネズエラ人投手のチョ・マテヨ。その実績とは裏腹に、イ軍に加入してからというもの、登板すれば炎上の繰り返しで、「北の火薬庫」とブーイングされる始末であった。
以上の如く、戦力としては全くアテにならぬマテヨであったが、本拠地球場近くに親北朝鮮と噂される党首がいる某○民党本部がある為、観客動員の面から外すに外せない(党首の鶴の一声で、党員が結構試合を見に来ていた)。
あちらを立てればこちらが立たぬのジレンマに陥ったイ軍は、
「今のマテヨは自信を無くしちまってる。野郎を洗脳して北朝鮮で投げてると思わせれば、まだしも精神的に上から目線になれて、まともな投球が出来るんじゃないか」
と、ダメ元で高名な催眠術師を招聘。早速北朝鮮仕様のマテヨが先発登板する仕儀と相成ったのであった。
そして試合当日。
洗脳されたマテヨが「北朝鮮にいる」という認識の為、北朝鮮語しか話せずコミュニケーションに問題が発生したものの、投球練習の段階では、これまでよりは幾分マシな球速、キレであった。
だがしかし、
「これなら5回5失点ぐらいで何とかなるんじゃないか(いつもは5回持たず7~8失点)」
という首脳陣の淡い期待は、プレイボール一球目にして秒速で打ち砕かれた。
対戦マ軍の先頭打者が金髪白人のネルソンだったのであるが、マテヨから投じられた初球がいきなり頭部強襲のビーンボール。幸い投げたのがマテヨだったのでほぼ棒球であり、ネルソンは辛くも避け切れたのであったが、マテヨは謝る風でもなく、むしろマンセーマンセー言いながら激しく煽っているのであった。
イ軍ベンチが、
「しまった! マテヨの野郎、今北朝鮮にいるって洗脳されてやがるから、敵国の外人(米国人)を容赦なく潰しにかかってきてるんだ!」
と気付いたがもはや後の祭り。初球こそ「どうせマテヨは糞制球だから」と審判に見逃してもらえたものの、二球目もビーンボールが行った事により、危険球退場待ったなしで万事休す。イ軍のマテヨ洗脳作戦は、マ軍との新たな遺恨を作っただけで、何の意味も無く終了したのであった…。




