【イ軍編183】マシンガンフォロー
今年のイ軍は一味違う。
これまではいくら投手がピンチに陥ろうが知らん顔だった内野陣が、やたらとマウンドに足を運ぶようになったのである。厳しい顔で激励する者、投手をリラックスさせようと笑いに走る者、自意識過剰でカメラ目線になる者――。やり方は様々であったが、とにもかくにも、投手―野手間が険悪なイ軍では、まず見られなかった光景である。
「フッ、今年から投手をフォローすりゃインセンティブが付くようになったからな」
「一回ウン万円と考えりゃ、マウンドまでの散歩ぐらい安いもんよ」
「テレビにもバッチリ映るしな」
という、結局は球団主導の例によってしょーもない経緯ではあったが、これで僅かでもチーム力がアップするのではと、淡い期待が持たれたものである――――だが、そうはいかないのがイ軍のイ軍たる所以であった。
前述のインセンティブであるが、投手が打たれてしまうと無効となる為、本当の意味でのピンチでは「靴ヒモほどけたわー」「コンタクトズレたわー」等の行けないフリが横行。更に、どうでもいい場面でマウンドに内野陣が集結しては投手の集中を乱す事で余計な被安打が激増。結果、イ軍内野陣によるマシンガンフォローは、とんでもないブーメランボールへと結実したのであった。




