エエでのマクさん
目下3年連続99敗をマークしているプロ野球最弱球団、東京新宿イディオッツ。
そんなイ軍にあって正捕手を務めるのは、某強豪チームでレギュラーを張った事もある強打好リードの綿貫。実績十分の選手ではあったが、3年前にイ軍に移籍してからは持ち味であったパワハラ系オラオラリードが完全に裏目に出てしまい、投壊を防ぐどころか推し進める元凶となる有様であった。
こうした状況を踏まえ、綿貫の打撃は捨て難いものの、イ軍は正捕手候補としてある中堅選手をトレードで獲得。「エエでのマクさん」と呼ばれるサ軍の第二捕手、馬来田である。
この馬来田、打守走は全て平均以下ながらも、投手を褒めまくり気持ち良く投げさせる事に定評があり、不振の選手は幕田と組ませると復活するという都市伝説まで発生する程であった。実際、イ軍移籍後に即レギュラー出場し、「北の火薬庫」こと北朝鮮系ベネズエラ人投手チョ・マテヨとバッテリーを組み、「ウェーハッハッハ!(※例の北朝鮮のニュースおばちゃん)」等の北朝鮮ギャグを駆使してマテヨを好リード。加えてエエでエエでを連発しておだてまくりながら完投勝利に導き、いきなり結果を残したのである。
一か月後、イ軍ベンチ――。
「監督、馬来田の奴がノイローゼになっちまったみたいで、しばらく試合に出れないみたいです」
「ちょ、待てよ! せっかくいい感じで来てたのに、一体どうしちまったんだ!?」
「確かに試合で結果は出てましたが、精神的に相当負担があったようです。ウチのいいとこが全く無い投手陣を褒めまくるとなると、相当な質量の嘘を付かなきゃならなくなりますからねえ。ナイスガイと定評のある馬来田的には、厳しかったようです」




