【イ軍編177】イ軍を覆う黒い謀略
プロ野球史上に残る屈指の最弱球団東京新宿イディオッツに、パリーグ某チームを再建した伝説の剛腕球団社長黄川田が電撃加入。その内実は、イ軍オーナーの愛人からのし上がり専横を極めるGM柳澤に対抗する為、オーナーの妻一派が捻じ込んだ人事なのであった。
黄川田と言えば、球団の体質改善、選手獲得の手腕もさる事ながら、勝手に采配を振るう等の現場への度を越えた介入でも有名。手掛けた球団は確かに短期的に浮上するのであるが、数年後に必ず反動が出てしまうので、毀誉褒貶の激しい所ではあった。
そんな曰くつきの強権的人物が乗り込んでくるとあって、イ軍の選手方も大いに警戒。加入初日、早速球場へ現れ、無言ながらもグラウンドに目を光らせる黄川田に対し、ガンを飛ばす者1割、無視を決め込む者1割、揉み手をしながら擦り寄る者8割と、早くもチーム内に波乱の予感が立ち込めたものである。
だがしかし、それ以降は黄川田が現場が来る事もなく、チーム内は小康状態となったのであった。
「フッ、黄川田の野郎、さては俺らにビビったか?」
「いや、以前の若手中心のチームならいざ知らず、大人のチームに無用な口出しは不要と分かってるのさ」
等と、例によって勘違い花盛りのイ軍ナインであったが、かつて黄川田所属チームに在籍経験がある支倉だけは、
「おいおい、油断はよくねえよ。あの陰険野郎の事だ、絶対何か企んでやがるぞ」
と、イ軍ナインに警戒を促すのであった。
一方その頃、球団社長執務室では、黄川田が親しいスポーツ紙記者と密談を繰り広げていた――。
「いやー、外で見るのと中に入ってみるのじゃ大違い、シャレになってねえよイ軍の駄目さ加減は…。何やっても絶対最下位のままだろうから、変に頑張って俺の評判落とすのも嫌だし、おたくの新聞で俺は球団社長を降りる程じゃないけど色々やるのには難しい程度の病気になったって、テキトーに書いといてよ」




