【イ軍編176】一芸残留
人の出入りが激しい球界にあって、弱いだけに尚更選手の入れ替えが頻繁な東京新宿イディオッツ。
そんなイ軍にあって、10年の長きに渡り幾多のリストラをすり抜けてきた生え抜き投手志賀。通算成績5勝、防御率6.47の彼奴がいかにしてイ軍で生き延びてきたのか――その答えは、志賀の類稀なる形態模写能力にあった。どんな投球フォームだろうが、実にそっくりに再現する事が出来るのである。
この能力を武器に、投手コーチがマシンガン解雇&新任される度、そのコーチの現役時代のフォームを調べ上げてトレースし、初顔合わせの時点で猛アピール。毎年整理リストに名を連ねながらも、「志賀にはチャンスやるか(俺とフォーム同じだから)」といった具合に、ちゃっかり生き残るのであった。
志賀の特殊能力については口コミで他球団選手にも伝わり、フォームを崩した選手が原因を探るため、極秘で志賀の元を訪れて、いい時の自分の真似をしてもらう程。「イ軍に志賀あり」と、一芸を極めた事で球界にその名を轟かす次第となったのである。
※尚、投手コーチが替わる度にフォームを変更する為、志賀はプロ10年目にして自分のフォームが未だに固まらず、物真似能力は野球の技術と一切リンクせず。結果、まるで戦力にならない状態で、イ軍の投手陣の枠を無駄に一つ消費し続けているのであった…。




