【イ軍編173】至高の冥途の土産をプロデュース
「イ軍さんじゃ! イ軍さんが来たぞぉーッ!」
時はプロ野球がシーズンオフに入った11月。某大型老人ホームに、「球界の掃き溜め」ことプロスポーツ史上屈指の最弱球団、東京新宿イディオッツの面々が慰問に訪れているのであった。
球団のイメージアップを狙って数年前から始まった取組みであるが、この老人ホームでだけは何故か大歓待を受ける為(他はブーイングされるケースも多発)、お小遣い稼ぎを兼ねてイ軍側の参加者が年々増加。今ではレギュラークラスがほとんど顔を揃える豪華メンバーとなっていたのである。
入居者たちの喜びようを見るにつけ、
「フッ、こんだけ盛り上がれば来た甲斐があるってもんだな」
「ファンに夢を与えるとはまさにこの事。プロ冥利に尽きるぜ」
等々、城戸を始めとするイ軍ナインたちも、満更ではない心持ちになっていたのであった。
イベント終了後、老人ホーム入居者による感想戦――。
「いや~、今年もイ軍さんが来てくれて楽しかったわい」
「シーズンオフで太っていたからか、テレビで見るよりも動きが鈍かったのう」
「毎年恒例の三角ベース大会、ワシらでも勝っちまうぐらいイ軍さんは弱いから、面白くて仕方ないちゃね」
「野球でプロに勝ったんじゃと、あの世の婆さんにいい冥途の土産が出来たわい」




