【イ軍編171】球界一激しいレギュラー争いを強いられるイ軍
「横一線の競争がしたい」
そう言って強豪マ軍からFA宣言したベテラン外野手須川。近年は自身の不振とチームの若手切り替えの方針で大幅に出場試合数を減らしており、マジで引退5秒前と関係者の間では噂されていたものである。
しかしながら、あと数本に迫った1500本安打と150本塁打を何としても達成するべく、本人はやる気満々。出場機会を求めて、選手層の薄さに定評のある最弱球団東京新宿イディオッツへの移籍を決めたのであった。
「フッ、須川の野郎、競争競争言いながら、層の薄いイ軍なら無競争でレギュラー獲れると勘違いしてやがる」
須川のイ軍入団会見を見ながら不敵な笑みを浮かべるのは、前年FAでイ軍に加入した外野手岩井。
「全く、これだからイ軍の恐ろしさを知らない奴は困るぜ」
同じく、前々年にFAで加入した佐久間。
「ま、来年の春季キャンプ、奴がイ軍ならではの難関に打ち勝てるかどうか、お手並み拝見と行こうじゃねえか」
――そう、普通に考えれば、一見まともな競争相手のいないイ軍では、簡単にポジションが奪えるように思える。
しかしながら、エア自主トレ、手抜きキャンプが蔓延するイ軍にあって、プロ野球選手としての姿勢を維持するのは、並大抵の事では無いのである。こうなってくると、一番の難敵は他者ではなく、自分自身。
イ軍の負のオーラに呑まれ、簡単に自分に負けてしまった岩井と佐久間は、須川も間違いなく自分たちの後を追う筈だと、漫画の中途半端なボスキャラのようなトークを繰り広げるのであった…。




