【クローザー矢車編②】始球式マッチ
イ軍クローザー、矢車の100セーブが懸かった試合。
ホームの新宿スタジアム開催試合という事で、急遽始球式に矢車の師匠格だった往年の名投手、西崎が呼ばれたものである。
かつての師弟コンビ集結にオールドファンは湧き立ち、いつもは殺伐とした球場も、若干和やかな空気になっていた。
そしてマウンドに登る西崎、打席に立つ矢車。
西崎の全盛期、球界を湧かせたベストピッチが投じられ…
矢車が思い切り後ろにのけぞって転倒!!!!
ドーピングでもしてきたのか、もう51になろうかというのに140kmを計測した勝負球――頭を狙ったギリギリのビーンボール。矢車のそれは西崎から伝授されたものだ――が、すっぽ抜けて危うく矢車の頭部を撃ち抜くところであった。
これには矢車が激昂、
「こんな場面で危ねえ球投げてんじゃねえ!」
と、マウンドに向かって一直線。
「何だこの野郎! 大先輩に向かってその口の聞き方があるか!」
西崎も応戦し、試合開始前だというのに現役vsOBという前代未聞の乱闘が始まったのである。
「いやー、もっと緩い球投げてシャレでしたあははって台本だったのに、西崎のおやじは現役に未練が有り過ぎて、血が騒いじまったのかねえ。まあこっちとしては思ったより盛り上がったからいいけどさ」
これ全て、パネマジ広報白井の差し金であった。




