【イ軍編149】運命の日本シリーズ
「球界の掃き溜め」こと日本プロ野球最弱球団、東京新宿イディオッツの選手寮。
年々練習するフリだけは巧くなり、実際の技術は一向に向上しない「二軍の主」的な野手数名が、この日ばかりは野球中継――――バ軍対ド軍の日本シリーズ――――に熱狂。繰り広げられる熱戦に対し、TVが置いてある食堂で絶叫や悲鳴を上げつつ、激しく一喜一憂しているのであった。
分けても、バ軍エース倉西への声援は、机バンバンや祈祷師コスプレを織り交ぜた、ミーハーファンもここまで盛り上がらぬであろうというレベルの騒々しさ。KK5(近隣から苦情5秒前)といった状況ではあったが、寮長である片井は(奴らもやっと野球に対して前向きになったか)と、そっと目を拭いながらこれを黙認。慈しむような視線で彼奴らを見守るのであった。
だがしかし、イ軍は例え二軍でもイ軍であったのである。
「よーしよし! 倉西ナイス! よく抑えた!」
「うむ、ド軍打線は今年で契約が切れるベテラン揃い。ここで絶対に抑えないとマジで危ないからな」
「ああ、この日シリで奴らヘタに打ってみろ、バ軍を目の敵にするウチのビッチGMが、確実に高額契約で獲りに行くからな。それでライバルが増えちまったら、俺らの選手生命と年俸がヤベえ事になる」
こうしてイ軍二軍の主連中は、今日も今日とて練習以外での選手生命維持に死力を尽くすのであった。




