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【マウンドの詐欺師 神崎編②】ハードボーラー宣言
「今年は直球にこだわる。球速はともかく、重い球を投げて行くぜ」
キャンプ初日、多彩かつ中途半端な変化球と胡散臭い駆け引きが生命線の神崎が、何をか言わんやの宣言をカマしたものである。
最初、ネタかと思ったマスゴミからは、「どっ」と失笑が起こった程。
そんな馬鹿にし切ったマスゴミ連中に対して怒るでもなく、
「まあ見てろって」
と余裕の表情で、神崎は打撃投手としてマウンドに登った。
そこで、マスゴミたちは信じられない光景を目の当たりにする。
赤田、長森ら若手を相手に、3、4球に1回ペースでバットを折りまくるのである。
一見、昨年までの神崎と何も変わりは無さそうなのだが、対戦する打者が悉く手が痺れた風なジェスチャーをしているところを見ると、球質が激変しているとしか思えない。
これは何か凄い事が起こっているのでは…。
神崎、38歳にしての突然変異に、マスゴミは俄然色めき立ったのであった。
が、次の瞬間、用具メーカーの営業が現れて、謎は全て氷解した。
「あ、神崎さん。ご依頼の折れそうなバットなんすけど、ここに置いといていいですか?」