【城戸編147】自分の事より球界の事を優先する大選手の鑑
「40億の不良債権」「世界の併殺魔」としてイ軍を幾多の敗北に導いてきた「永久A級戦犯」こと城戸。
4億10年総額40億の巨額FA契約がまだ3年残っている状況ではあったが、今年で43と寄る年波にはさすがに勝てぬのか、今シーズンは春先から例年以上に絶不調。8月までほぼ全試合出場ながら打率180、本塁打0と、プロの中に1人だけ草野球のおやじが紛れ込んでいるかのような惨状を呈していたのであった。
この体たらくにさすがの城戸も「そろそろ潮時かもなあ…」と、思わず一人ごちたのであるが、この情報をキャッチしたイ軍首脳陣の動きは早かった。城戸が弱気になっているチャンスを逃してなるものかと、ここ数年、幸せなリタイアを果たした他球団のスター選手連中の引退試合動画を城戸の生活圏内のあらゆる場面に挿入。何としても城戸を引退させるべく、一大サブリミナル作戦を敢行したのである。
そしてシーズン終了後、遂に城戸から球団幹部へ、今後の去就についての会談申し入れが発生。これで不良債権の早期処理が完了しそうとあって、イ軍首脳は一気に祝賀モードになったのであった――――城戸との面談が始まるまでは。
「おう、マスゴミやらネット民やらが俺が引退するんじゃねえかって連日トバしまくってるけどな、そんな事ねえから。まあ確かに今年は弱気になってた時期もあったが、よくよく考えたら、ここ数年で他のチームのスター選手が何人も引退してるじゃねえか。これで俺まで引退したら、球界のファン離れが一気に進んじまう。ちょっと体が辛いのは事実だが、これもスターの務めだろうし、イ軍の為、いや球界の為にあと3年、契約期間をしっかり全うするぜ」
――消化試合で打ちまくって優勝戦線を引っ掻き回しまくるお前が引退するのが一番ファンの為なんだよ! と、イ軍首脳陣は渾身の顔芸で訴えるしかなかったのだが、時既に遅し。
こうしてイ軍が展開したサブリミナル引退誘導は、城戸の過激派ご都合主義思考により、球史に残るレベルのブーメランボールと化してしまったのであった。




