【イ軍編131】魔球16連射
イ軍が12球団トライアウトに参加していたマ軍投手幕田を獲得。
幕田と言えば隔年で突如勝ち出す投手として、一部マニア連中からは好かれていたものの、この何年かは鳴かず飛ばず。31歳ながらもマ軍に見切られてしまい、2ちゃんでも「今年引退しそうな選手」スレでMI5(※マジで引退5秒前)筆頭と目されている始末であった。
そんな幕田獲得については、「どうせイ軍がいつもの如く昔の実績に目が眩んだか、さもなきゃ単なる数合わせだろう」というのがプロ野球ファン及び関係者の一致した見解であったが、事実は異なっていた。
「フッ、来年頭にモンスタークエストの新作が5年振りに出るのよ。幕田の野郎は確実に復活するわ」
と、ドヤ顔で大勝利宣言したのは、イ軍GMの柳澤である。
ゲームが出るから何なのか。オリンピックの時に覚醒するこち亀の日暮のような、周期的なもんなのか。一見、糞みたいなゲン担ぎのような話ではあったが、これには裏付けがあった。
モンスタークエストといえば高難度のアクションRPGで全国に中毒者が発生、一部では廃人製造機とも言われる程に完成度の高いゲームであったが、ボタン連射を要求される場面が頻出する事でも有名であった。幕田はこのモンクエオタとして悪名高く、発売直後はやり込みまくって練習にも身が入らない有様であったが、世の中、何が幸いするか分からない。
親指に発生したモンクエ連射ダコが投球に微妙な変化をもたらし、ナチュラルなカットボールとなって、凡打を量産。前作4が発売された5年前のシーズン、幕田は突如勝ちまくり、その年だけは14勝を挙げる大活躍を見せたのであった。
「これで相原、神崎、モンクエじゃなかった幕田の先発三本柱が固定できるわ。イ軍CS出場待ったなしってとこね」
と、ドヤ顔ノンストップヘヴン状態となる柳澤であった。
こうして幕田はイ軍に加入、モンクエ新作もキャンプのタイミングと同時に発売され、予定通り幕田は本職ゲーム廃人&パートで野球選手やってます状態に突入。モンクエダコでキレのある変化球を投げ始め、柳澤の目論みは物の見事に当たった。
かに見えた。
だがしかし、好事魔多しである。
自らの妙手に酔った柳澤がパネマジ広報こと白井に命じて「モンクエ投手」「魔球16連射」と幕田を煽りまくるように指示したのが全ての間違いであった。
調子こいた幕田が限界を超えるレベルでモンクエにのめり込んだのと、その影響でイ軍内にモンクエ中患者が大量発生してしまい、万事休す。
度が過ぎたモンクエやり込みでコンディションを崩壊させ腰を故障してしまった(無理な姿勢でモンクエやり過ぎた)幕田は結局一試合も登板出来ずシーズン終了。更にはモンクエのあまりの面白さにイ軍ナインが完全にヤラれてしまい、野球に身が入らない事ボンクラ学生の如し。気の無いプレーに磨きがかかってしまい、CSどころか全球団負け越し&3ケタ敗戦を記録して、イ軍はモンクエを止められないナイン自身に完全敗北を喫してしまったのであった。




