【城戸編144】無意識の内に首位打者を育てていた球界の至宝の鑑
チーム打率3割を誇る強打線は健在ながらも、投手陣崩壊で低迷し、シーズン終了を待たずして球団首脳総替えとなったマ軍。
親会社の命を受けて天下ってきた、ほぼ野球を知らない新球団社長井村が真っ先に取り組んだのは、膨れ上がり過ぎた人件費の整理----選手年俸のコストカットであった。
高年俸の割に動きの悪くなった選手を次々に解雇リストに載せ、あるいはトレードの駒とするなど、ストーブリーグに入り次第大胆な動きが取れるよう、抜かりなく準備を整えたものである。
その選手年俸対策の一環として、表には出せないダーティな手法にも着手。今季、打率3割3分を維持し大ブレイクした5年目の藤木のタイトル争いを妨害し、首位打者獲得による年俸高騰を阻止しようというのである。
こうして井村は本拠地球場の用具係を買収し、藤木と首位打者のタイトルを激しく争うライバル打者が打席に入る時限定で、超高品質な飛ぶボールを手配。テキトーに振っただけでもホームランになるという違法球で、藤木の残念賞は確実なものと思われたのであった。
だがしかし、である。
タイトルを巡る直接対決、
「えっっっっっっ!!!!???? 何で4番がバントすんの!!!!????」
井村が飛ぶボールを仕込んだ、藤木から首位打者を奪取してくれる筈のライバル――――イ軍の城戸――――は、せっかくの飛ぶボールをものともせず、ランナーがいようがいまいが状況無視で全打席セーフティバントを敢行。さすがの城戸も超高品質な飛ぶボールの勢いは殺し切れず、全打席内野ゴロとなって万事休す。
こうして城戸の打率乞食っぷりを知らなかった事による井村の逆アシストが結果的に幸いし、藤木は晴れて首位打者のタイトルを獲得。これをきっかけに藤木は以降3年連続タイトルを手にして年俸が暴騰、井村は城戸を絡めてしまったが故のブーメランボールで、マ軍の球団経営で大いに苦しむ事となったのであった…。




