【城戸編141】絶対に怪我させてはならない球界の至宝
サ軍―イ軍戦。
2回裏で「40億の不良債権」「消化試合の鬼」ことイ軍4番城戸の場面、サ軍先発の若手投手倉西のスライダーが、すっぽ抜けて城戸の右手を直撃。城戸本人はそこまで痛がっていないものの、監督の不二村以下チームスタッフが急行。城戸の容態を確認し、
「おい、こりゃマジでやべえぞ」
「手術! 手術の準備するように病院に言っとけ!」
「全治何か月かかるか見当がつかない」
「このまま引退の可能性もあるかもな…」
等々、深刻な雰囲気で対応を協議。結局、大事を取って城戸は病院へ直行する事になったのであった。
その後、倉西はタイムを取ってイ軍ベンチに直行。
「城戸さんは大丈夫ですよね?」
と、執拗に訊ねたものであるが、
「さあ、医者の診察結果を聞かないと何とも言えないなあ」
つれない答えしか返ってこないのであった。
肩を落としてマウンドに戻る倉西を眺めながら、イ軍ベンチではハイタッチの嵐が巻き起こったのであった。
「よーしよし、倉西の野郎、完全に動揺してやがったな」
「うむ、サ軍は城戸の凡退で勝ち星を稼ぐ傾向が強いからな。城戸を死球で欠場に追い込むと高額罰金が発生する裏情報は、こちとら先刻承知よ」
「クックック、これで若い芽を摘む事に成功したってもんだ」
「城戸の奴も、怪我は大した事ないのに素直に帰ってくれて助かったわ。たまたま見たいドラマがやってたからだな。仕事よりテレビを優先するプロ根性()はさすがだぜ」
等々、大勝利確定の流れにドヤ顔でコメントをかましまくるのであった。
だがしかし、野球の神様は、何の躊躇いも無く小汚い戦法を繰り出すイ軍への制裁を、ちゃーんと用意していたのである。
城戸を負傷させた事による高額罰金発生で動揺した倉西が、コントロールを乱しまくって万事休す。主力打者の長森や綿貫までもが死球を喰らって、こちらは本当に全治1か月近くの重傷を負ってしまい、イ軍打線は完全に崩壊。こうして物の見事にイ軍お得意のブーメランボールがキマってしまったのであった…。




