【風神雷神編⑤】ホームランを打たれない事で試合崩壊
プロ野球交流戦、イ軍はパリーグ所属のタ軍との一戦に臨んでいた。
タ軍本拠地と言えば、海が近い屋外球場で、投手有利な逆風が吹く事で悪名高い球場である。
特にこの日は外野側からホームベース側への風が強い状況で、イ軍監督不二村はここぞとばかりに強引な予告先発変更を実行。ホームランが発生し辛いと読んで、世界被本塁打記録保持者の“風神”こと岸谷を先発させたのであった。
果たして風神の投じた試合開始一球目、タ軍強打の一番打者が放った打球は普段なら間違いなくスタンドインしているであろう大飛球であったが、物の見事に風に押し戻され、外野フライに終わったものである。
「フッ、俺の高度な采配が当たったようだな」
と、腕組みしながらドヤ顔で自画自賛に余念の無い不二村。
しかし、これは悲劇の始まりに過ぎなかったのである。
実際、世界のホームラン王(※打たれる方)風神岸谷の力を持ってしても、あまりの逆風の強さでホームランは発生しなかった。しかしながら、その分、外野に数多くの飛球が行ってしまった事で、もともとザルもいいところ&運動不足の左翼城戸、中堅リバース、右翼宣保愛甲のイ軍外野守備が完全崩壊。飛んではポロリを繰り返し、ホームランを打たれるまでもなく試合崩壊。更には普段のエア練習が祟って前述の外野守備で完全にバテてしまった事で、打撃にも影響が出てしまい万事休す。
こうしてイ軍は通常の数倍は悲惨な、一風変わった味わい深い敗戦を喫したのであった…。




