【キャンプ地編①】鬼監督就任、ダメ、ゼッタイ。
秋風吹くシーズン終盤、「球界の掃き溜め」こと東京新宿イディオッツでも、各種人事についての怪情報が毎日のようにスポーツ紙を賑わせていた。
その中でも信憑性が高いとされたのが、現監督不二村が切られ、後任に超厳しい指導で鳴らす元バ軍OBの岡持が招聘されるというものであった。
この岡持、過去の監督・コーチ時代、レギュラー陣だろうが結果が出ない者・練習態度がなってない者に対しては容赦の無い措置を取った実績があり、
「落ちるところまで落ちている、と思ったらまだ新しい底があった」
という泥沼状態のイ軍を立て直すにはうってつけの人材と見られていたのである。
しかし、この動きに対して、意外な方面から「待った」の声が掛かった――イ軍が春季キャンプを張る九州某県某町の、飲食店経営者らの組合である。
各種スポーツ紙(※主に新スポ)が、
「岡持監督就任5秒前。イ軍ナイン顔面ブルーレイ化」
等と面白おかしく煽りまくる事態を受けて、イ軍春季キャンプ地から前述の飲食店関係者らがイ軍球団事務所に押し掛け「岡野就任絶対反対」を訴えて猛抗議を展開。一体何事かと対応に出たイ軍パネマジ広報こと白井は、彼らの真の意図に震撼せざるを得ないのであった。
「おいコラ! イ軍に厳しい監督はいらんけえの!」
「そうじゃそうじゃ! 例えレギュラーでもダメだったら2軍に落としまくるとか、それは絶対やっちゃいけんよ!」
「そんな事されたらのう、1軍キャンプにだーれもおらんようになって、ワシらの商売上がったりなんじゃ! もし本当に岡野が監督になったら損害賠償で訴えるから覚悟しちょけよ!」




