【風神雷神編③】地の利を活かしたホームラン殺し
バ軍本拠地東京ドームでのバ軍―イ軍戦。
イ軍先発真壁が11安打を浴びながらも要所を締め、4-3とイ軍1点リードで迎えた9回裏。2死満塁と攻め立てられたMS5(※マジでサヨナラ5秒前)の状況で、イ軍監督不二村は有り得ないリリーフを投入。何と、前日5被弾を喰らって2回11失点で負け投手になっていたイ軍の“雷神”こと被本塁打世界記録保持者の渡瀬をマウンドに送り込んだのであった。しかも、バッターは4番ジョーンズ。昨日も渡瀬に2ホームランを浴びせたように、非常に相性の悪い打者である。
サヨナラ勝ちを確信して超盛り上がってるバ軍ファンの大歓声に隠れるのを良い事に、
「おいコラ不二村! バ軍にいくら金をもらったんだ!」
等々、口々に不二村にヤジを飛ばすグラウンド上のイ軍ナイン。
とにもかくにも、渡瀬はマウンドに上がり、イ軍の勝利は風前の灯火であると思われた。
だがしかし、ジョーンズは何故か打ちにくそうに窮屈な打撃になっていた――昨日とはまるで別人のように、中途半端なスイングになっているのである。
「クックック…。奴がこれ以上ホームランを打てないのは、こちとらの情報網で先刻承知よ」
そう、事実、ジョーンズには「ホームラン打つな」のサインが出ていたのである。昨日、電光掲示板上の警備会社の看板に2連続で当てて賞金を荒稼ぎしていたのであるが、
「まさかこんなとこに当てられる奴絶対いないだろwwww」
と、同じ選手が複数回当てると賞金額が跳ね上がる設定が為されていたのが悪かった。渡瀬の被長打力と東京ドームの空調力の併せ技で、前述のまさかが起こってしまったのである。それにより、3回目を当ててしまうと1億の賞金が発生し、完全に赤字となってしまうスポンサーから申し入れがあり、ジョーンズに加減するようにバ軍首脳陣から指示が下ったという経緯なのであった。
果たして、ジョーンズは当てるだけの打撃になってしまい、打球は1、2塁間へのボテボテのゴロに。しかしながら、
「こりゃ絶対ホームランだな」
と、一塁城戸、二塁アームブリスターが今日はどこのキャバクラに行こうかと悩んで完全に無警戒になっていた事で万事休す。フツーにやれば絶対取れるであろう凡打に誰も追いつけず、2走者が生還してバ軍のサヨナラ勝利。
こうしてイ軍は勝負に勝って、試合に敗れ去ったのであった…。




