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【イ軍編116】心霊キャンプ ?
イ軍春季キャンプ初日。
昨年唯一の新人(※他のドラフト指名された者は全員入団拒否)外野手和久田は希望に燃えていた。しょっぱな、キャンプ地での田舎道ランニングにも自然と力が入り、先頭に躍り出たものである。
そして、しばらくして後ろを見ると――――誰も、いなかったのであった。
――すわ、神隠しか!?
話には聞いていたが、このキャンプ地は心霊ネタの宝庫で、経費節減の為に敢えてイ軍がここを選定しているともっぱらの噂である。
恐怖でパニックになった和久田はひとまず全速力でメイングラウンドへ到達し、ストレッチをしていたエース相原を掴まえ、事の顛末をまくし立てたものである。
「そうか、お前は初日なんだっけか。じゃあビビるのも仕方ねえな。野手の奴ら、ランニングをサボってタクシーに乗ってやがんだよ。そろそろ着く頃じゃねえかなあ…。神隠しと思った? 残念ながら違うんだなこれが。ただ、あまりにもどうしようもない連中が多いから、球団の上の連中はリアル神隠しを期待してここをキャンプ地にしてるって話だぜ」




