【城戸編135】呪いのサイン
某月某日。
東京新宿スタジアムのホーム側ロッカーで、対戦相手の資料を読み込む――――フリをして二重にした三流週刊誌を熟読する「40億の不良債権」こと城戸の元に、調達屋リバースが泡を喰ってやって来たものである。
「城戸さんヤベーよ! あんた用に準備しといた飛ぶボールと飛ぶバットそれぞれ50個、NPBから査察が入るかも知れねえ」
「ちょ、おいマジかよ!」
「とりあえず今すぐやられる事はなさそうだが、ちょっと試合では使えねえ」
「つってもなあ。前払いで金払った分はどうしてくれんだよ」
「仕方ねえから、そこは闇オークションに掛けて何とかするよ。しかし参ったな…」
貴重な収入源が絶たれ、頭を抱えるリバース。
城戸は考えた。
今回は下手を打ったとはいえ、リバースは城戸の成績維持の為に、金次第であらゆる手段を講じる事が可能な貴重な存在ではある。今後の為に恩を売るべく、何かやれる事はないか。
そうこう思案する中で、会心のサプライズを思い付いた城戸は、優しい笑みを浮かべて半泣きのリバースを眺めるのであった。
そして翌日早朝、ロッカー内に隠してある飛ぶボール&バットをこっそり回収に来たリバースをとんでもない悲劇が襲う。
「な、何だこりゃあ!!!!」
そう、闇オークションに掛ける予定の違法グッズに、城戸が要らん気を効かせてサインを入れていたのである。
「これじゃタダでも引き取り拒否されちまうぞ畜生!!!!」
自らの不人気に全く気付いていない城戸の善意・結果嫌がらせに、リバースは放心する他ないのであった――――。




