【イ軍編109】炎上の作法
被本塁打世界記録保持者の風神・雷神を筆頭に、球界を代表する燃える男(※炎上的な意味で)・花火師(※ホームラン打ち上げる的な意味で)が揃う東京新宿イディオッツ投手陣。
そんな草野球以上マスターズリーグ未満のイ軍投手陣に、久々にイキのいい若手が台頭。開幕から4試合連続でクオリティスタート(6回迄3自責点以内投球)の快投を見せた、宮谷である。
エア自主トレ&手抜きキャンプの成果が全面に出ているイ軍野手陣が打てず守れずで足を引っ張りまくって勝星こそ付いていないものの、エース相原以降絶えて久しかった若手好投手出現に、ファン・関係者の間では数少ない明るい話題となっていたのであった。
さて、その宮谷であるが、好投しながら一向に勝てぬ状況に緊張の糸が切れてしまったのか。シーズン5度目の登板で、3回7失点の大炎上。ショックの余りか、マウンドでリリーフにボールを渡す事を忘れ一人ベンチに戻ってしまい、ベンチに腰を下ろしタオルで顔を覆ってしまったのであった。
これに大激怒したのが、イ軍の女GM「サイボーグビューティ」こと柳澤である。
「あんの野郎! ウチのチームとして、今の態度は絶対に許せないわよ!」
と、試合が行われていた東京新宿スタジアムの執務室から、ベンチを急襲。炎上のショックを消化出来ない宮谷の胸ぐらを掴んで、マシンガン説教を展開したのであった。
「ちょっとマジでいい加減にしなさいよ! さっきから、あんたの態度は何なのよ!」
突然のGM大噴火に、ようやく我に返った宮谷。
――そうだ、俺は後に投げる人の事も考えずに、自分が打たれまくってテンパっちまってた――。
「す、すんませんGM。確かに俺の態度は悪かった。あとで今投げてくれてる島井さんに謝ってきます」
「はあ? いや、そんな気遣いとかマジでどうでもいいから。つーか島井の野郎、今もあんた以上に打たれまくってやがるし! つーかさ、打たれてマウンドから降りる時はもっと感情を爆発させろって開幕前に言ってあったでしょうが! どうせ負けるんだったら、もっと見て面白おかしいエンターテインメントに徹しろっつーの! ほら! こういう風にベンチやクーラーボックス破壊してもいいし! ワケの分からねえ打てない新外人に八つ当たりしてチーム内乱闘してもいいわよ!」
こうやってひとしきり暴れまくった柳澤のお蔭で、この時間帯のみ、瞬間的に視聴率が跳ね上がったのであった。
試合後、柳澤より改めてイ軍投手陣に炎上後の悔しがりアクション徹底の通達が為され、今後、視聴率に反映した暴れ芸についてはインセンティブを付ける事を発表。散々邪道だとディスられまくりながらも、「弱くて負けても見どころのある野球」として、イ軍流炎上の作法が定着していったのであった。




