【イ軍編101】個人事業主の鑑のような連中が繰り出す応援の真相
真夏のデーゲーム、サ軍―イ軍戦。
普段は自分の数字にしか興味が無い、個人事業主の鑑のような連中が揃っているイ軍ナインであったが、集団で食中毒でも起こしたか、この試合では打席に立っている選手をベンチから激しく応援していたものである。
「おい! しっかりボール見ていけ!」
「大事に! 大事に行けや!」
等々、まるで別のチームかと見紛う程の変貌ぶりであった。
(奴らも遂にチームプレーの何たるかを理解してくれたか…。イ軍はワシが育てた)
と、チームの大不振でコーチがマシンガン解雇された影響による人手不足で、三塁ベースコーチズボックスに陣取るイ軍監督不二村は、そっと目頭を拭うのであった。
だがしかし、やはりイ軍はどこまで行ってもイ軍であった。
「おいおい、だから早打ちはやめろっつってんだろ!」
「頼むからちょっとでも長く涼ませてくれよ」
「何せ投手が打たれ過ぎで、この糞暑いのに長時間守備に就いてんだもんなあ」
そう、別に勝ちたいからとかチームプレーがどうたらという話ではなく、単に自分が一秒でも長く涼みたいというだけなのであった。
そのくせ、自分が打席に立てば、
「一番早くベンチに戻れる方法と言えばホームランしかないだろ」
と、無謀な大振りを連発。
環境や状況に左右されないイ軍魂を大いに発揮し、今日も今日とて見事な大敗をキメてみせたのであった…。




