【真壁編①】早く中止しろ
5回表、ブ軍の攻撃中、雨脚が一気に強まってきた。
11-10の馬鹿試合で、奇跡的に打線が繋がりリードしているイ軍ベンチでは、何としてもコールドで試合を成立させるべく、ブ軍に対して「早く打ってアウトになれやこらぁ!」と、不二村監督以下野次の大合唱が始まった。
何ともみっともない姿ではあったものの、連敗ストップの貴重なチャンスとあっては、天候に頼りたくなるのも無理からぬところではあった。
それに対抗し、ブ軍は降雨中止を狙って、ミエミエの引き延ばし工作を展開。打席を外しまくり、タイムを取りまくりの、何とも救いの無い泥仕合となったのであった。ブ軍の行動がイ軍ベンチを刺激し、野次は更にヒートアップしていく。
「おら何やってんだ遅延行為反対!」
「ファンをないがしろにしてんじゃねえぞおい!」
「それでもプロかこの野郎!」
「おい審判! この雨じゃ怪我しちまうからさっさと降雨中止しろ!」
「…は?」
イ軍ベンチの野次に、一人だけ、そしてひときわ大音声で降雨ノーゲームを主張する選手がいた。
先発で3回途中9失点の真壁。今日の登板で防御率が跳ね上がり、失点をシーズン成績に反映させない千載一遇のチャンスと、チームの勝利はうっちゃって、自分の成績維持に必死なのであった…。




