【相原編⑩】暗闘オールスター
シーズン前半、4勝9敗ながら防御率2.81、奪三振113のイ軍相原が今年も監督推薦でオールスターに出場。
普段はとんでもなく無愛想かつ尊大な相原だが、例年、オールスターだけは別人のようにフレンドリーな姿に変貌。各球団のスター選手と談笑し、特に強豪チームの正捕手らと、実際の投球を交えながら、技術論を戦わせるのであった。
他球団のスターたちは、相原について以下の如く語ったものである。
「うーむ、相原の奴、所属球団が良くないんだろうなあ」
「そうだな、噂とは全然違って先輩を立てる、裏表の無い気持ちのいい人間だもんな」
「ま、馬鹿正直過ぎるというか、自分の投球のクセを気付かないで喋っちゃうほどだけどな」
「これで後半戦、カモに出来るってもんだ藁」
――後日、イ軍ブルペン。
「おい、今年もしっかり仕込んできたのか?」
相原の同僚であるイ軍の「歩く違法投球」こと神崎が、オールスターの首尾を2828しながら訊ねたものである。
これに対し、相原は満面の邪悪な笑みを浮かべ、答えたのであった。
「ええ、オールスターで舞い上がってる純情な間抜けのフリをして、他球団のレギュラーキャッチャー連中にダミーの癖を散々吹き込んでやりましたよ。これでシーズン後半、有利な投球が出来るってもんです」




