【イ軍編84】剛腕クローザー降臨の悲劇
メジャー200セーブの剛腕クローザー、ダイヤモンドバックスのジョンキンスがイ軍に電撃入団!!!!
の、衝撃的な一報がもたらされた時、
「ま~た始まった」
「いつぞやみたく同姓同名の別人とかじゃねえのか」
「どうせ故障でぶっ壊れて投げられないんだろ」
と、ファンと野球界の反応は極めて冷ややかだったのだが、とにもかくにも、年俸5億という破格の条件で、ジョンキンスは本当に入団したものである。
この2年、過去の登板過多のツケで若干成績を落としていたとはいえ、5年連続で30セーブ以上をマークしているバリバリのメジャーリーガーである。キャンプの時点から大注目を集め、隙あらば突っ込んでやろうと球界関係者たちが目を光らせていたのであるが――――
「うーむ。これは凄い」
「もしかして本物かも知れねえな」
ジョンキンスの高速カットボールを目の当たりにし、思わず掌を返す事しか出来なかったのである。
その様子を満足気に眺めながら、
「フッ、やはりGMには補強を任せてはおけんなあ」
「はい。さすがは社長でございます。トップ営業でリアルメジャーを獲得した手腕、大変お見事でございます」
イ軍球団社長桜井は、GM柳澤をディスりつつ悦に入りまくるのであった。
しかし、桜井のドヤ顔も、シーズンインしてからは長くは続かなかった。
確かにジョンキンスは怪我もしていなければ、サボりもしなかった。だが、契約内容がイ軍にとっては致命的――――「セーブの付く場面限定で起用する」という内容――――になっていたのである。そもそも「新宿の火薬庫」の異名を取るイ軍投手陣がセーブの付く状況(9回時点で3点以内リード)をそうそう演出できるワケもなく、まともな野球知識さえあれば、ジョンキンスが宝の持ち腐れ状態になる事は、火を見るより明らかだった筈なのである。桜井の野球知識の無さを突いた、ジョンキンス側代理人の完全な戦略勝ちであった。
こうしてジョンキンスは年俸5億をゲットしつつ、登板過多で摩耗した腕を適度に休めながら、家族と日本観光をエンジョイして翌年メジャーに復帰していったのであった。




