【イ軍編83】騙される事、疾風の如し
「おいおい何だこりゃあ!」
初夏のサ軍本拠地で、首脳陣の悲鳴が上がったものである。
昨シーズンオフ、メジャー100勝の実績を引っ下げてサ軍に電撃入団した剛腕新外人バリー。しかし、怪我だの信仰問題だのと理由を付けて来日がズレ込みまくり、シーズン入りしてやっと来たと思ったら、体重過多で棒球しか放れない、見る影も無い無残な有様なのであった。
――代理人にまんまと一杯喰わされた。
獲得を担当した球団上層部への不満は尽きないが、現場としては先発投手として頭数に入れていた為、投げさせないワケにもいかない。
「しょうがねえ、イ軍戦に投げさせるしかねえだろ」
「そうですね。奴らならネームバリューに騙されてくれる可能性が高いですからね」
サ軍首脳陣の協議の結果、バリーは「球界の掃き溜め」こと最弱球団であるイ軍相手に先発登板する事となったのであった。
そして問題の試合当日。
「しまった!!!!」
サ軍首脳陣の目論みは、必要以上に当たってしまったのであった。
メジャー100勝の実績は確かにイ軍を圧倒していたのであるが、ビビり過ぎた主力野手たちが仮病でも使ったか、ほぼ全員がベンチスタート。比較的バットが振れている若手がスタメンに出てきてしまい、却って状況が悪化してしまったのであった。
実際、サ軍首脳陣の不安は的中。
エア自主トレ&手抜きキャンプで体がなまりまくっているイ軍主力とは大違い、出場機会に餓えている&体のキレがある若手打者たちがバリーに襲い掛かり、初回、早くも5失点。サ軍首脳陣のバリー投入は、完全に裏目に出てしまったのであった。
尚、試合はバリー登板で「今日は捨てゲームだろ」と判断したイ軍首脳陣が送り込んだ谷間の谷間の谷間の先発、防御率7点台のボニーが初回8失点の大炎上。更には「何だよ、バリーは大した事ねえじゃねえか」と、イ軍主力野手が途中出場した事で打線が停滞して万事休す。
結局10-22でイ軍が大敗を喫するという、いつものオチがついたのであった。




