【イ軍編81】バキューム編成に定評のあるイ軍
マ軍が持て余す「落ち武者メジャー」こと井上が、実に2年ぶりに一軍復帰。イ軍三連戦で、3番左翼で即スタメン起用されたものである。
この井上、日本では首位打者争いの常連だったのだが、メジャーでは左投手を全く打てず、3年前のシーズンオフに帰国。当時、まだ30歳と若く、日本での実績を買われてマ軍が5年8億の大型契約を締結したものの、一度狂った打撃フォームを修正出来ず、とんでもない不良債権と化していたのであった。
働かない高給取りに対するファンの風当たりは殊のほか強く、激しいブーイングに晒され、それがまた不調に一層拍車を掛けてもいた。
そんな井上が、再び一軍に戻ってくる――。
またぞろ凄まじいブーイングの嵐が予想され、井上自身も覚悟していたのであったが、意外にもファンの声援は暖かく、そして大きかったのであった。
「頼むぞ井上ェ!!!!」
「イ軍に社会の厳しさを叩き込んでやれやぁ!!!!」
――正直、日本に戻ってからの大不振で、野球を辞めようと思った事は数知れず。しかし、諦めないで良かった――。ファンの大声援に包まれて、井上はそっと目頭を拭うのであった。
一方その頃、マ軍球団上層部。
「井上には何としてもイ軍戦で打ってもらわねばな」
「はい。イ軍なら『井上はまだイケるんじゃないか』とか何とか勘違いして、獲得に動く可能性大ですからね」
「うむ。ここは何としてもイ軍に不良債権を処理してもらわないとな」
「ファンもその辺はよく理解して、必死の応援態勢を敷いているようです」




