【城戸編655】絶対に囁いてはならない日本最強打者がここにいる
「ォん、城戸さん、ちょっと構え変えましたか? これはまたエライ打ちそうなフォームでんな~」
とは、昨オフにパリーグからセリーグのサ軍にFA加入した捕手高岸の言。最弱イ軍の四番打者「40億の凡打製造機」に対しての囁き戦法であった。
(ワイの必殺『対戦打者の打撃フォームなんかロクに見た事無いけど、それっぽく話して撹乱ウィスパー』受けてみよ! まあ城戸さんは何もせんでも打ち取れるとは聞いとるが、油断大敵、何事も徹底するのがワイの流儀やからね。こちとらのパリーグ野球の洗礼浴びせて打率0割に完封、息の根止めたるわ)
てな感じで心の中でドヤ顔が止まらない高岸に対して、城戸は無駄に感動。
「ファー、去年までパリーグにおったのに、よう分かるの~。ワイ自身気付いとらんのに、大したモンやで。さすが、選手間で実は異常人気のワイ(確信)」
等とワケの分からない事を口走る城戸であったが、その打席は余裕で力の無い二ゴロ凡退。そして、サ軍の攻撃で高岸が単打を放ち、一塁に達したところで、悲劇は起こったのである。
「おう高やん、ワイはオタを大事にする性分でな。まあ取っといてや」
と、高岸のズボンのポケットに紙片を滑り込ませたのであった。
「!?!?!?!?」
突然の事におったまげた高木が思わず紙片を読んだところ、
『高岸クンへ 大・勝・利 ユーの永遠のスターより』
という城戸のサインなのであった。
それを目ざとく見つけた一塁塁審が、
「スパイ&八百長疑惑バリューセット!!!!」
高らかにコールし、試合中断からの強制調査。
「ちょ、待てよ!!!!」
と、悲鳴を上げる高岸と、ま~たワイへの憧れを拗らせた審判のツンデレムーヴが始まった…と、満更でもない苦笑を浮かべる城戸。
最終的にはシロと判断されたものの、以降、NPBから監視対象となってしまった高岸の精神的動揺は大きく、シーズン打率と盗塁阻止率1割未満とかいう大不振に陥って無事死亡。セリーグの最弱野球の洗礼を浴びせられて、選手寿命燃え尽き三倍速ニキと化してしまったのであった。




