【イ軍編3378】8回終わり、あと3人となって誰も投手に話し掛けない
「北の火薬庫」こと最弱イ軍の北朝鮮系ベネズエラ人投手、チョ・マテヨはベンチ裏で顔を洗っていて気付いた。いつもはああだこうだ文句を付けて来るコーチや監督が何も言ってこない。というか誰も寄ってこない。来日してから経験した事が無い現象だが――――そういえば、8回が終わっている。もしかするとこれはアレか? 完全試合をやってる時の投手に話し掛けてはならぬ的な球界のジンクス、不文律か? まあ彼奴等、小心オブ小心で肝心な時に動けないタイプだから…。そういうマテヨ自身も、8回まで完全の過程が、脳内から飛んでいた。おそらく、それ程までにいわゆる「ゾーン」に入っているのだろう。久々に将軍様に脚色無しの報告が出来そうである。完全出来ているから、9回は7番打者からの打順。代打に出て来る左打者に気を付ければ、今日の調子なら問題無いだろう。
「よーし、ほなちゃっちゃと3人で片付けて、完全試合達成したろうまい! 球団職員勢は祝賀会の店の手配と偉業達成声明文の作成、将軍様への電報準備もしといてや!」
ベンチに戻ったマテヨは、クソデカボイスで指示を飛ばす。
その様子に呆気に取られているイ軍戦犯系ベテランズを、マテヨは笑い飛ばしたものである。
「本人がこないにリラックスしとるいうのに、ユーたちが固くなってどうすんのや! しょーもないジンクスなんか気にせず、こっちから話しかける豪胆ワイ、カッコE まっ、尻上がりに調子を上げとる(多分)今日のワイなら9回は野手に処理させんで抑えられるやろうから、せいぜいお祝いのコメントでも考えとってや。――――何や、監督やコーチは球史に残る名場面にビビッて隠れとるんか、全くしゃーない奴らやの~」
――――この怖過ぎる事態を、誰が打開するのか。それはやはり、チーム一空気を読めない第二捕手の赤田であった。
「ファーwwwwマーさん(マテヨ)マジ面白いwwwwちょっとガンギマリ過ぎwwww 完全も何も、さっき先発の新人江波が7回まで完全しとったのを『新人は100球以上投げちゃダメ絶対。今日の対戦打線は絶不調やから(小声)、リリーフワイで日朝友好の懸け橋として将軍様にアッピールや! 北が日本を助けたいう朝日ゴールデンストーリーで外貨獲得のシャイニングロードが見えた(確信)』言うて裏の北ルート圧力で出て来たはいいが、貫禄の10失点で試合ぶち壊してますやんけ。監督とコーチはストレスで倒れてさっき病院送りになったから、そら文句の言いようもないですわね。さっきマーさん、何か飲んどると思ったらやっぱ北謹製のお薬(意味深)ぽかったから、こんだけ飛べる(意味深)んなら、やっぱ効くもんなんやねー(適当)」




