【イ軍編57】時空操作戦法
今年も交流戦の季節がやってきた。
パリーグのダ軍がイ軍本拠地新宿スタジアムに乗り込んでの一戦。
ダ軍先発は、最高球速156kmを誇る剛腕エース笹倉。基本的に150km前後の速球を打てる選手が誰もいないイ軍打線を相手に、奪三振ショーが展開される予想され、ダ軍ファンが球場に大挙して押し寄せたものである。
しかしながら、初回、笹倉に予想外の異変が発生。
特に調子が悪そうには見えないのだが、直球を投じたところ、何故か球場の球速表示が140km台前半に終始。笹倉はしきりに首を捻り、次第に落ち着かない様子を見せたのである。
「クックック、これぞ新スタ名物、球速減速表示よ。これで笹倉の野郎、直球は走ってないと見て変化球に走らざるを得なくなるぜ。奴は直球は一級品だが変化球は二流だからなあ。この試合、もらったも同然だな」
と、誰も頼んでもいないのにイ軍ベンチでベラベラと一人解説する監督不二村。
そう、この怪現象は、全てイ軍側が仕組んだ策略なのであった。
だがしかし、不二村の読みはとんでもない結果を産んでしまった。
球速が出ずに意地になった笹倉が、変化球に走るどころか余計力を入れてストレートを投げ込んだ事で万事休す。実測160km近い剛球に手も足も出ず完封を喫した挙句、日本記録の20三振を喫してしまったのであった…。




