【イ軍編54】全力代打回避
バ軍―イ軍戦、バ軍先発は球界を代表する右腕阿藤。
その阿藤の前に、期待を裏切らずスコアボードに0を並べまくるイ軍打線。イ軍先発のエース相原も阿藤に劣らずバ軍打線相手に完封ペースだったものの、野手の失策が原因で1失点し、敗色濃厚な状況。そんな中、9回裏イ軍の攻撃、バッター相原の局面で遂に代打がコールされたものである。
(冗談じゃねえ、阿藤相手に代打で出ていっちまったら、打率を下げちまうだけだぜ)
と、イ軍ベンチの控え野手陣は、全員が監督不二村から目を逸らすか居眠りを偽装するかで、全力で代打回避の態勢を取るしょーもなさであった。
「おいおい、お前らのこのやる気の無さは一体何なんだよ…。よし、じゃあ気合の入ってるブリ! ちょっと行ってこいや」
「WHAT!!!!????」
一瞬、寝たフリ継続&日本語が分からないフリをしようかと思ったアームブリスターであったが、おもっくそデカい声で反応してしまっているだけにどうにもならず万事休す。代打で出て阿藤の前に敢え無く凡退、契約更改が近い大事な時期に、きっちりと打率を下げてしまったのであった。
その後、帰りのバスの中で不貞寝を決め込んだブリを眺めて、イ軍控え野手陣は会心の感想戦を繰り広げたのであった。
「いやあ、このまぶたアートっつーの? ホントこれ起きてガン飛ばしてるようにしか見えないな。プロのメイクはマジスゲーな」
「うむ、ブリが練習中に居眠りしてる時に、危険を冒した甲斐があったってもんだ」




