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【宣保愛甲編④】ゴーストボール

　マ軍―イ軍戦。

　強打を誇りながらも心霊ネタＮＧの選手が多いマ軍打線に対し、イ軍は懲りずに霊能者兼野球選手の宣保愛甲を起用。何と今度は本職の外野でなく、ほとんど経験の無い捕手としてグラウンドに現れたものである。

　さて、試合開始以降、審判からニューボールを手渡される度、

「うわあ…これは…このボール、優勝を見れずに死んだイ軍オタの霊が…うわあ…これ打ったら絶対呪われるわあ…」

　と、例によって、いちいち心霊煽りをカマしたのであった。

　これに対し半ばフカしと分かってはいるものの、祟りにビビったマ軍の強打者たちはイ軍先発チョ・マテヨの何の変哲も無い棒球に対して、全く手が出せないのであった。

「フッ、マ軍打線敗れたり」

　強打マ軍打線相手に悪くても完封、うまくいけば完全試合の可能性すら感じたイ軍ベンチでは早過ぎるハイタッチすら飛び出す始末であったが、彼奴らが顔面ブルーレイになるまでに、そう時間は掛からなかった。

　何と、イ軍先発チョ・マテヨの制球が定まらず、マ軍打線に全く打つ気が無いのに６連続四球の大惨事。変わったリリーフ陣も５連続四球で繋いで、試合は完全崩壊してしまったのであった。

「霊が俺達にまで祟りやがった！！！！」

　と、マテヨ始めイ軍投手陣は必死に訴えたが、当然そんなワケはない。

イ軍投手陣はエース相原や神崎を除いて、もともとほとんどストライクが入らない制球難揃いである。しかし、そのあまりの棒球ぶりに、他チーム打線が「打てばヒットになる」と、手を出してくれていたのである。そして今回、マ軍打線が全く手を出してくれなくなった事で、イ軍投手陣は自滅する他無くなったというのが真相なのであった。

　こうして宣保愛甲のゴーストボール戦法は、イ軍お得意のブーメランボールとなって完結したのであった。