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【綿貫編⑨】チートボール破れたり
開幕一巡目、サ軍対イ軍戦。
今年、パリーグからサ軍に加入した「サイン盗みの達人」こと下川が、さっそくカマしたものである。
バットのグリップを気にするそぶりを見せながら、しきりにイ軍正捕手綿貫の構える位置、そしてサインを盗み見しまくっているのであった。
だがしかし、綿貫は内角に寄り続け、指一本の同じサインしか出していないものの、球が全てバラけまくって結局下川はフルカウントから空振り三振。
「おい、なかなかやるじゃねえか」
と、完全に撹乱されてしまった下川も思わず脱帽せざるを得なかったのである。
だがしかし、これに対する綿貫の回答は、チートボールで鳴らす下川も思わず唸ってしまうヒド過ぎる内容なのであった。
「はあ? 何言ってやがんだ、全然駄目だっつーのこのサイン盗み野郎。汚ねえ手を使う奴にはコレ(中指一本上げるファックサイン)でぶつけろって指示出してんのに、投げる方のコントロールが悪すぎてかすりもしなかったわ。全く、当てちゃまずい場面で当てるクセに、狙わせるとこのザマだよ」




