【城戸編555】「守備固め、ワイ!」
「守備固めワイ、サード入るわ」
そう宣言して、兼任監督としてベンチで采配を振るっていた城戸は、魅沢を下がらせ三塁の守備位置に就いたものである。
一見華麗なムーヴだが実態は大穴という魅沢のゲロザル守備を見かねての措置であった。
だが、城戸自身の守備力もいいとこ中学野球レベルで、大穴が大寄りの中穴になったレベルの、詮無き守備固めである。多少なりともバットコントロールに自信がある者であれば、三塁へ打ち返して外野へゴロで抜く事など、造作も無い。だが、魅沢にあって城戸に無い物が、ここでは命運を分けた。
乗りたくなる煽りにかけては球界随一な城戸の「ヘイヘイカモーソ!!!!」などと声を張り上げながらグラブパンパーンしぐさに、打席に立った敵の2番打者は、三塁線ギリギリへの鋭いゴロを放った。
それはあっさりと城戸をすり抜け、フェンスへ到達――――と思われたその時、投手の投球と同時に三塁の定位置に猛ダッシュしてきた遊撃の草加部が、多少の余裕すら持って軽快に捕球、鮮やかに二塁に転送させ、ブリから一塁の諸橋へ渡って併殺が完成したのであった。
魅沢にあって城戸に無い物――――それは、プライド、見栄。いや、城戸にそれらが全く無いワケではないのだが、他人を出し抜く事や嫌な気持ちにさせる事の方が、優先順位が遥かに上なのだ。だからこそ、恥も外聞も無く草加部に「ポジ取りは普通にしといて、打球見る前に三塁来てどうぞ。ワイが釣り出すから」という異常なシフトを敷かせ、自分の守備力への更なる低評価と引き換えに、穴(城戸)を狙った打者をまんまとアウトに仕留めたのであった。
「あえて見せ場を部下に任せる、マネジメントの鬼ボールを見よ(ドヤァ)」




