【城戸編106】諸刃の殺人スライディング
シーズン終盤、いよいよ首位打者争いも佳境に入りつつある状況でのサ軍―イ軍戦。
タイトル候補の一角であるイ軍の4番「帳尻の鬼」こと城戸が珍しく引っ張りの強振、二塁打性の長打を右翼フェンスにぶち当てたものである。
二塁のベースカバーに入ったのは、遊撃を守るこれまた首位打者候補の名取であったが、すぐと不穏な空気に気付いた。二塁へダッシュしてくる城戸から、あからさまな殺気が漂っているのである。危険を察知して名取がポジションを右へずらせば右へ、左へずらせば左へと、名取の動きに城戸が合わせてくるのだ。ベース付近になって、名取がスルスルと移動したところに、絶対にセーフのタイミングに関わらず城戸が猛然と殺人スライディングを敢行。所詮鈍重な城戸がいくら名取を削ろうとしてもまずかわされるのがオチではあったのだが、
「フッ、うまく避けやがったな。だが、果たして動揺を引きずらないで次の打席に立てるかな?」
と、野球の神様にいつ誅殺されても不思議はない台詞をのうのうと吐くのであった。
※尚、名取に釣り出されてベースからかなり離れた場所にスライディングしてしまった城戸は敢え無くアウト。折角の二塁打が帳消しになった動揺で残りの3打席も凡退し、首位打者争いから大きく後退したのであった。




